多様な構造物を含む農業用パイプラインの非定常流解析プログラム

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要約

汎用非定常流解析プログラムは多様な構造物を含む農業用パイプラインのシステム全体の流況を解析できる。これにより、管路の破壊原因となる水撃圧等動的特性や緩やかな非定常現象の予測を設計段階等で容易かつ的確に行うことができる。

  • 担当:農業工学研究所・水工部・上席研究官
  • 代表連絡先:029-838-7535 Mail Address
  • 区分:技術及び行政
  • 分類:普及成果情報

背景

近年、農業用パイプラインは延長が長くなるとともに、分水工、水槽などの多様な構造物から構成されてきている。また、分水弁は比較的軽い力で簡単に開閉できるなど、その操作性が改良されている。他方、コンピュータの進展とともに水撃圧などの非定常流の解析手法も多く提案されてきた。しかし、それらはシステムの一部を取り出して管路の解析手法の提案であった。このため、農業用パイプラインの計画、設計の現場ではシステム全体として水撃圧などの動的特性を解析・予測することはできなかった。そこで、本研究ではパイプライン全体をシステムとして水撃圧等の非定常流を解析・予測できるプログラムの開発を行った。

成果の内容・特徴

  • 管路の非定常流水理計算は微小項を省略した基礎方程式を特性曲線法で数値積分して行った。
  • 本プログラムで扱える主たる構造物は管路の他、概ね次の通りである(図1参照)。
    (1)サージタンク (2)水槽 (3)隔壁付水槽 (4)弁(バタフライ弁、スルース弁)(5)フロート型弁(サブマージド・ディスクバルブ、フーデッド・ディスクバルブ)(6)幹線から短い管路で分水される分水工 (7)揚水機場(但し揚程に関わらず流量は一定のポンプとして扱っている)
  • 2で述べた構造物は入力データを変更することによって、システム全体として容易に非定常流解析を行える(図2参照)。
  • システム全体の大きさにもよるが、秒単位の現象である水撃圧ばかりでなく、適切な条件(水需要量の時間的変動など)を入力することにより、日単位の現象となるファームポンドの機能等の流況解析も行うことができる。

成果の活用面・留意点

本プログラムは計画・設計段階ばかりでなく管理段階においても使用可能であり、適切な水管理に対しても大きく貢献できる。今後は、現在含まれていないポンプ特性、圧力タンクの追加など、更に多様な構造物を含むパイプラインの水理解析が可能なプログラムを開発する予定である。なお、本プログラムの使用は農業工学研究所の使用許諾が必要である。

具体的データ

図1 解析可能な各種構造物を含むパイプラインの例
            図1 解析可能な各種構造物を含むパイプラインの例

図2 従来の検討手順と新たに開発したプログラムによる検討手順の相違(図1の例)
            図2 従来の検討手順と新たに開発したプログラムによる検討手順の相違(図1の例)

その他

  • 関連する中期計画大課題名:材料、構造、施設機能等の評価診断手法の開発
  • 予算区分:経常研究費/交付金
  • 研究期間:1996-2001年度
  • 研究担当者:吉野秀雄、中達雄
  • 発表論文等:1)プログラム著作権登録:題号「パイプラインの非定常流解析のための汎用プログラム」(登録番号P第7570号-1、登録年月日、平成14年7月11日)
                     2)吉野秀雄、中達雄、臼杵宣春、パイプラインにおける解析手法について(第4回)、ARIC情報No.65、41-57、2002.