便益帰着分析による農業農村整備の波及効果の定量的評価
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要約
アンケート調査やCVMに基づく便益帰着分析によれば、圃場整備(生産基盤)及び親 水公園整備(生活基盤)の効果が、最終的に直接的な受益者(農家あるいは利用者)及び間接的な受益者(消費者等)に波及しているとの結果が得られる。
- 担当:農業工学研究所・農村計画部・地域計画研究室
- 代表連絡先:029-838-7548

- 区分:技術及び行政
- 分類:参考
背景
農業農村整備のうち生産基盤整備としての圃場整備、あるいは生活基盤整備としての親水公園整備では、効率的な事業実施の観点から、直接的な受益者の便益を主とした費用便益分析が行われている。本研究では、圃場整備完了地区における関係農家に対するアンケート調査や親水公園周辺の利用者、非利用者に対するCVM(仮想状況評価法)の適用により便益帰着表を作成し、一般消費者の受ける間接的な便益を含めて、整備の便益が最終的にどの主体に波及するかを定量的に明らかにした。
成果の内容・特徴
- 圃場整備の便益波及(表1)
平地農村部を中心に実施される大区画等の圃場整備では、営農経費節減等を通じて全体プラス便益の57%が農家にとどまるが、残り43%は、米価、地代、固定資産税等を通じて一般消費者、土地持ち非農家(農村部非農家の一部)、市町村へと波及している。一方、政府部門では補助金等の支出による負担となっているが、全体の純便益及び内部収益率はプラスである。
- 親水公園整備の便益波及(表2)
親水公園整備では、利用者のみならず、将来利用のオプションに対する価値等を評価する非利用者にも便益がもたらされている。負担は、利用者の労務提供による清掃活動等の他、政府部門が負っているが、全体の純便益及び内部収益率はプラスである。
成果の活用面・留意点
本成果は、農業農村整備を公共事業として実施すことの意義付けを行う場合の参考として活用することが可能である。ただし、この他にも様々な便益が想定されることに留意するとともに、都道府県営圃場整備及び地域環境整備事業地区以外の事業、また社会条件の変化等により計算の前提条件が異なる場合には、本結果が適用できない点に留意されたい。
具体的データ


その他
- 研究課題名:便益帰着法による農村整備効果の定量的分析手法の開発
- 関連する中期計画大課題名:農村活性化のための施設資源の評価手法の開発と農業農村整備等の波及効果の解明
- 予算区分:交付金研究
- 研究期間:2001~2002年度
- 研究担当者:國光洋二、福与徳文、八木洋憲
- 発表論文等:1)國光洋二、地代と賃貸借面積の変化から見た圃場整備効果に関する研究、日本農業経済学会論文集、148-150、2002.
2)國光洋二・松尾芳雄、圃場整備による稲作の全要素生産性変化に関する計量分析、農林業問題研究、36(4)、265-269、2001.
3)國光洋二・松尾芳雄・友正達美、農村公園整備の仮想状況評価額に影響する要因と便益関数移転の可能性、農村計画学会誌、20(1)、31-40、2001.