農道整備事業によるアクセス改善がもたらす生活利便性向上効果の評価法

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要約

農道整備事業によるアクセス改善がもたらす生活利便性向上効果は、ヘドニック法により定量的に評価することができる。この方法によって、生活利便性向上効果を、オプション価値も含めて、生活交通量を使わずに算定できる。

  • 担当:農業工学研究所・農村計画部・総合評価研究室
  • 代表連絡先:029-838-7667 Mail Address
  • 区分:技術及び行政
  • 分類:参考

背景

農道整備事業の多面的効果の一つに、農村の生活利便性向上効果がある。生活利便性向上効果を算定するためには、将来の生活交通量をその他の経済活動等の交通量と分けて予測する必要があるが、そのためには多くの作業が必要である。また、生活利便性向上効果には、生活関連施設を利用する際の効果(利用価値)と、いつでも利用したい時に利用できるという満足感の向上効果(オプション価値)があるが、後者は交通量を使った手法では算定できない。ヘドニック法によれば、これらの課題を解決できる。

成果の内容・特徴

日常的生活圏(市町村内)と広域的生活圏の各中心市街地までのアクセス(車による所要時間)を生活利便性の指標とし、農道整備事業によるアクセス改善がもたらす効果を生活利便性改善効果としてヘドニック法により評価する。

  • 対象とする事業により生活利便性向上効果が生じる住宅地の範囲を求める。事例として、広域農道整備事業那珂地区(バードライン)によりアクセスが改善される区域の一部、平野台団地で試算した(図1)。
  • 通勤・通学・買物等に関する行動調査資料をもとに、その住宅区域を含む広域生活圏を設定する。事例では、平野台団地がある瓜連町を始め、国勢調査で水戸市への通勤・通学者が20%以上の市町村(那珂町、茨城町、大洗町、瓜連町、常北町、内原町、友部町、桂村)に、水戸市に隣接し関係が深いひたちなか市を加えた。
  • 広域生活圏内の住宅地の地価公示データ、都道府県地価調査データを収集し、各地点について、日常的生活圏の中心市街地への車による所要時間、広域的生活圏の中心市街地への車よる所要時間、その他、地価への影響が想定されるデータを整理する。事例では、地価公示データ・都道府県地価調査データの主な調査項目に、車・鉄道による所要時間、市町村の属性を加えて、説明変数の候補とした(表1)。分析に使った108地点について、車による所要時間別の地点数を表2に示す。
  • 現場で撮影された写真は、GPSによる位置情報と連動し、画像データベースに整理できる。
  • 重回帰分析により地価関数を求める。事例では、表1の説明変数の中から有意な変数の組み合わせとして表3に示す結果を得た。
  • 単位時間当たりの評価額に、事業の有無による所要時間の差と住宅地面積を掛けて、生活利便性向上効果を求める。事例では、広域農道の有無により、平野台団地から水戸中心市街地までの所要時間に3分の差が見込まれ、その効果は、表3より988円/分/m2×3分×26.7ha=791百万円と推定できた。

成果の活用面・留意点

  • 地価関数は分析する広域的生活圏により異なるため、個別に算定する必要がある。
  • 地価公示データ、都道府県地価調査データは信頼性が高く、入手も容易であるが、町村部には調査個所数が少ないところがある。

具体的データ

図1 広域農道と平野台団地の位置図
図1 広域農道と平野台団地の位置図

表1 地価関数の説明変数候補

表1 地価関数の説明変数候補

表2 所要時間別地点数

表2 所要時間別地点数

表3 地価関数の回帰分析結果

表3 地価関数の回帰分析結果

その他

  • 研究課題名:広域農道の持つ生活利便性改善・大気汚染緩和機能の定量的評価手法の開発
  • 中期計画大課題名:農業・農村及び事業における多面的機能の評価手法の開発
  • 予算区分:交付金プロ(農村経済活性化)
  • 研究期間:2001~2002年度
  • 研究担当者:蘭嘉宜・三橋初仁・遠藤和子・合崎英男
  • 発表論文等:蘭嘉宜・丹治肇、農道整備事業によるアクセス改善がもたらす生活利便性改善効果のヘドニック法による評価、農業土木学会論文集投稿中