高密度標高データを用いた水田区画界の自動認識手法
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要約
中山間地域の水田一枚ごとの区画界を、レーザープロファイラーから得られる地表面の高密度標高データを用いた湛水シミュレーションにより自動的に認識する手法が開発され、これにより地理情報データベース構築作業の効率化が期待される。
- 担当:農業工学研究所・農村環境部・景域研究室
- 代表連絡先:029-838-7556

- 区分:技術及び行政
- 分類:参考
背景
近年、地籍調査等の国土調査や農地環境緊急対策事業を通じて、中山間地域においても徐々に地理情報の整備が進みつつある。しかし、農地の基盤整備や流動化促進・利用集積等に必要な水田一枚ごとの区画界情報については、これらの調査事業でも整備されていない。従来、こうした区画界情報を取得するには、地上測量や航空写真の図化作業が必要であるが、本研究では、新たな地形計測センサーであるレーザープロファイラーを用いて、水田一枚ごとの区画界情報を自動的に取得する手法を開発した。
成果の内容・特徴
- レーザープロファイラーは、航空機等から地表面へレーザー光を照射して地表面の標高を、直接、高密度に計測するシステムである(図1)。レーザープロファイラーの高密度標高データを用いた本手法は、従来の航空写真の図化作業やデジタイズ作業のような手作業が不要となり、コンピュータ処理のみで区画界情報が作成できるため、より省力的かつ低コストな地理情報データベースの構築が可能となる。
- 本手法は、高密度標高データを基に、水田が持つ畦畔等の構造特性を利用して水田を湛水させるシミュレーション(図2、図3)を行い、水田の区画界を自動認識する手法である。その主な手順・考え方は下記の通り。
(1) 水田内の任意地点において水の湧出点があるものと仮定して、その地点から湛水を開始する(図3(a))。
(2) 湛水開始地点の水位を1cmずつ高めていき、湛水範囲を拡大する(図3(b))。
(3) 水田は畦畔で水を堰き止める構造になっており、湛水開始地点の水位が畦畔の高さを越えると、湛水範囲が下流側に隣接する区画に拡がるため、湛水面積が一挙に増大する(図3(c))。
(4) 湛水面積が一挙に増大した場合、隣接区画へ溢水したものと見なして、溢水する直前の湛水範囲を包絡するポリゴンを水田の区画界とする(図3(d))。
成果の活用面・留意点
- 本手法により把握される水田区画界の情報は、中山間地域における基盤整備や流動化促進・利用集積等の農地計画への利活用や、高解像度衛星との併用による農地管理状況のモニタリングへの利活用が期待される。
- 本成果では、底幅1m程度の台形状の畦畔を具備する水田を対象としているが、幅狭の畦畔で区切られた水田に適用する場合は、飛行高度を下げるなどしてデータ取得間隔を狭める必要がある。
具体的データ

図1 レーザープロファイラーの撮影諸元

図2 湛水シミュレーションにおける湛水面積と湛水深の関係

図3 湛水シミュレーションによる水田区画界の認識過程
その他
- 研究課題名:デジタルオルソ画像を用いた土地水利用状況センシング技術の開発
- 中期計画大課題名:農地基盤情報収集技術及び土地資源評価手法の開発
- 予算区分:委託プロ(農地基盤情報)
- 研究期間:2000~2002年度
- 研究担当者:上村健一郎、福本昌人
- 発表論文等:上村健一郎・福本昌人、レーザープロファイラーによる水田領域の認識手法について、平成13年度システム農学会秋期シンポジウム資料、73-74、2001.