細密数値情報と国勢調査小地域集計を利用した人口の空間分布推定手法

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要約

三大都市圏において、国勢調査の町丁・字等別集計総人口および細密数値情報の土地利用データから10mメッシュを単位として人口の空間分布を推定できる。

  • 担当:農業工学研究所・農村環境部・環境評価研究室
  • 代表連絡先:0298-38-7684 Mail Address
  • 区分:研究
  • 分類:参考

背景

コミュニティの中で伝統的に培われてきた農村集落の保健休養等の機能は、集落を流れる用水の共有を通して形成されている場合が多い。これら機能の居住者への効果は水面からの距離に依存すると考えられ、地域用水の評価には水路周辺の居住者数を計測することが必要となる。水谷ら(下水道協会誌Vol.30、1993)は、数百m程度を多くの人が家の近くに水面があると意識する距離としている。しかし、その距離で集計できる人口の空間分布の数値情報はない。
そこで、公開されている既存の数値情報を用いて、水路からの距離による集計に対応できる人口の詳細な空間分布を推定する手法を開発した。

成果の内容・特徴

  • 使用した数値情報はすべて公開されているもので、H7年国勢調査の町丁・字等別総人口と町丁・字等境域およびH6年細密数値情報10m土地利用である。千葉県内2市の町丁・字等を境界とする228地区(以下、地区と称する)を対象とした。
  • 図1の手順で、細密数値情報の10mメッシュ単位に住宅地区分(一般低層、密集低層、中・高層の3区分)に国勢調査の人口を配分して図3の人口分布図を作成した。
  • 住宅地のメッシュセルへ人口を配分するために、各地区の総人口と住宅地区分別面積を変数として重回帰分析を行い、aiを仮の配分人口として地区人口推定式(1)(R2=0.784、1%水準で有意)により各地区の総人口pjを推定した。次に、pjと統計の地区総人口Pjとの比を補正係数αjとして、(2)式により地区ごとに各住宅地区分への配分人口Aijを決定した。
  • 住宅地の人口密度は農村部ほど低く、地区のばらつきが大きい(図2)。配分人口にaiや近似曲線によるa'iを用いると地域内で人口分布が平均化される。補正係数αjにより地区間誤差が減少し、推定分布人口は総人口159,501人の99.94%となった。
  • 本手法により人口の空間分布図(図3)に水路から300m、900mの圏域を重ねて、地域用水の種類別に水路があると意識する圏域内の人口や人口密度が算定できる(表1)。

成果の活用面・留意点

  • 詳細な人口分布のデータは、地域用水の保健休養機能のほか多くの機能の受益者あるいは施設の利用者数の推定など、様々な場面に活用できる。
  • 細密数値情報の範囲は3大都市圏に限られるため、他地域においては国土数値情報や衛星リモートセンシングなどの利用による住宅地の分布の推定が必要となる。

具体的データ

図1 人口の空間分布推定の手順
図1 人口の空間分布推定の手順

図2 一般低層住宅地の人口密度と農地・山林地率の関係
図2 一般低層住宅地の人口密度と農地・山林地率の関係

表1 地域用水の水路があると意識する圏域の人口
表1 地域用水の水路があると意識する圏域の人口

図3 人口の空間分布と幹線水路からの距離
図3 人口の空間分布と幹線水路からの距離

その他

  • 研究課題名:農村集落における地域用水がもつ保健休養機能の定量的評価
  • 中期計画大課題名:農業・農村の教育的機能及び景観特性の解明と文化資源情報のデータベース活用手法の開発
  • 予算区分:交付金プロ(環境勘定)
  • 研究期間:2001~2003年度
  • 研究担当者:松森堅治・石田憲治・飯嶋孝史・上田達巳
  • 発表論文等:1)松森堅治・石田憲治・上田達巳,地域用水の認知に関する人口分布の推定,システム農学講要,18別1,110-111,2002.
    2)石田憲治・松森堅治・飯嶋孝史,地域用水のもつ保健休養機能の潜在的な利用圏域に関する事例分析,農業土木学会関東支部講要,53,24-25,2002.