GISと農業センサスを用いた茶園の傾斜度と生産性の関係の推計手法

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要約

数値地図情報等のGISデータと農業センサスを用いて、集落単位で農地の傾斜度と生産性を推計する手法により、傾斜と茶園の生産性の関係を地域的、広域的に把握できる。

  • 担当:農業工学研究所・地域資源部・土地資源研究室
  • 代表連絡先:029-838-7670 Mail Address
  • 区分:技術及び行政
  • 分類:参考

背景

中山間地域では、耕作放棄地の増加等に起因する多面的機能の低下が懸念されており、農業生産活動の維持増進のため、基盤整備等の支援方策がなされている。特に傾斜は生産性を抑制すると一般的には理解できるが、実際の栽培形態の中で不利性を明らかにすることは多くの費用と労力が必要である。そこで、中山間地域の代表的な農地である茶園を事例として、全国を整備してある数値地図情報等を用いて地理情報システム(GIS)により集落単位の平均傾斜度を算出し、これと農業センサスのデータとを組み合わせて中山間地域における農地の生産性を推計する手法を開発する。

成果の内容・特徴

  • 各集落の茶園の平均傾斜度の推計は、国土数値情報の約100mメッシュ単位の土地利用データ、数値地図の約50mメッシュ単位の標高データおよびセンサス集落界データを用いて、図1に示す手順で行う。事例とした地区においては、図中の処理(1)における土地利用データのコード04「その他の樹木畑」を茶園メッシュとした。
  • 1/25,000レベルの地図情報に基づく本手法による傾斜度の推計精度の目安を得るため、1/2,500レベルの航空写真デジタルオルソ画像が整備された地区(静岡県K町)において、1/2,500レベルの地図を用いた傾斜度の計算値と、約50mメッシュ単位の標高データから傾斜度を比較した結果、推定誤差RMSEは2.4°であった(図2)。
  • 図1の手順で推計された静岡県の各集落の茶園の傾斜度データと、農業センサスによる各集落の総投下労働日数(投下労働日数の階級別の農家数に各階級値を乗じて合計)等のデータを用いて、傾斜条件と生産状況の関係を解析した。ただし、投下労働日数等は地目別のデータではないため、「都市的地域を除く集落で、茶園面積が耕地面積の80%以上を占める集落」のデータを解析に用いた。図3(c)に示す解析結果から、「投下労働日数当りの農産物販売金額」は、傾斜度が8°未満の集落を100とすると傾斜度が8~15°の集落は75、傾斜度が15°以上の集落は58であり、茶園の多くが傾斜地に立地している集落ほど労働生産性が低い傾向を定量的に示すことができた。

成果の活用面・留意点

中山間地域における農業生産活動の支援に係る施策を一層推進する上で、対象地域や対象年を変えて労働生産性の不利性の指標として情報が提供できる。

具体的データ

図1 GISによる各集落の茶園の平均傾斜度推計の手順
図1 GISによる各集落の茶園の平均傾斜度推計の手順

図2 K町における各集落の茶園の平均傾斜度の推計精度
図2 K町における各集落の茶園の平均傾斜度の推計精度

図3 傾斜条件と生産状況の関係(茶園)
図3 傾斜条件と生産状況の関係(茶園)

その他

  • 研究課題名:地域活性化のための土地資源の総合的評価手法の開発
  • 中期計画大課題名:農地基盤情報収集技術及び土地資源評価手法の開発
  • 予算区分:交付金プロ[農村経済活性化]
  • 研究期間:1999~2002年
  • 研究担当者:福本昌人、小川茂男、島武男、原口暢朗
  • 発表論文等:福本昌人:GISによる土地資源情報の整備・利用法、平成13年度地域資源研究会資料、41-56、2001