造成地から発生する伐採木の活用のための炭化

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要約

造成工事で発生する伐採木は、800°Cの炭化によって炭化前重量の25%程度に減量できる。炭化物の分析結果から、主成分である炭素の含有量やpH,最大容水量などの特性が解明され、土壌改良用木炭の代替が有力であることが明らかとなる。

  • 担当:農業工学研究所・農地整備部・畑整備研究室
  • 代表連絡先:029-838-7553 Mail Address
  • 区分:技術及び行政
  • 分類:参考

背景

全国に整備の必要なため池は約2万ヶ所あるといわれる。このうち、周囲が都市化して受益面積が減少したため池については、かんがい目的以外の多面的機能をも評価して、その増進を図るよう整備することが求められている。そこで、対象のため池における流域の流出モデルを作成、降雨分布特性と確率雨量を考慮して、ため池の洪水低減機能と空き容量との関係を下流水路の通水能力を指標として評価した。

成果の内容・特徴

  • ダム造成地の伐採木(3種類の広葉樹枝部、伐採木チップ、杉根株)から生成した炭の成分組成を分析した結果、成分の多くを占める炭素(T-C)は木炭と同程度であり、無機成分は木炭と比較して多少の違いがあった(表1)。
  • 伐採木から生成した炭の特性値を表2に示す。 1)木炭の場合、炭化温度が高い方がpHが高くなり、低い炭化温度(400°C)で微酸性、高い炭化温度(600°C以上)でアルカリ性を示すことが知られており、伐採木から生成した炭も同様に低温でpH6.3、高温でpH8.5~9.4を示した。伐採木チップから生成した炭の土壌混入試験(1,2,5,10%重量)では、pH6.6の関東ローム土壌のpHの変化は確認されなかった(図1)。2)伐採木から生成した炭の最大容水量は木炭と同等以上であった。
  • 伐採木から生成した炭の組成および特性は木炭と同等であり、従来廃棄または焼却処理されていた造成地の伐採木を炭化することにより、土壌改良などの建設資材用木炭の代替品としての利用が有力であることが明らかになった。
  • 炭化前後の試料重量から求めた減量率は、炭化温度800°Cの場合71.8~76.8%であり、炭化により重量は1/4程度になり、木炭並の減量効果が確認された(図2)。

成果の活用面・留意点

  • 普及のために今後、現地発生土壌に混入した場合の土壌化学性,物理性の改善効果および作物生産への影響・効果を確認する必要がある。
  • 産業廃棄物として処理した場合および他の再資源化による場合とのコストの比較が必要である。

具体的データ

表1 炭の分析値
表1 炭の分析値

表2 炭の特性値
表2 炭の特性値

図1 炭の混入率とpH
図1 炭の混入率とpH

図2 炭化前重量に対する炭化後重量と減量率
図2 炭化前重量に対する炭化後重量と減量率

その他

  • 研究課題名:ファームポンドにおける炭を利用した用水浄化の適用性の解明
  • 中期計画大課題名:再資源炭等リサイクル資源の利用技術の開発
  • 予算区分:交付金研究、その他(受託)
  • 研究期間:1999~2002年度
  • 研究担当者:齋藤孝則、凌 祥之、山岡 賢
  • 発表論文等:1) 齋藤孝則・凌 祥之・山岡 賢、建設発生木材等の炭化物の再利用に関する考察、農業土木学会誌、71(4)、47-50、2003.