LEDの局部補光による園芸作物の形態制御

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要約

ゼラニウムの花柄上部に、赤色または青色のLED(発光ダイオード)を用いて補光すると、花柄長の伸長を抑制することができる。また、赤色LED下で発生する園芸作物の葉の巻き込み現象は、青色LEDによる補光で抑制できる。

  • 担当:農業工学研究所・農地整備部・農業施設研究室
  • 代表連絡先:029-838-7655 Mail Address
  • 区分:研究
  • 分類:普及成果情報

背景

小型の光源であるLED(発光ダイオード)は、価格的にも植物栽培に利用できる段階に達しつつある。超高輝度のものも開発され、従来は照射できる光質が赤色などに限られていたが、現在はほとんどの単色光がそろっている。このようなLEDを用いて特定の光質の光を特定部位に補光することにより、作物の形態制御や品質向上に活用できる可能性が高い。そこで、このようなLEDを利用して野菜や花きの形態制御のための補光方法を検討する。

成果の内容・特徴

  • ゼラニウムの花柄上部にLEDを用いて補光すると、赤色LEDと青色LEDの場合、花柄長の伸長は対照区に比較して約14%抑制される(図1)。一方、遠赤色LEDの場合、花柄長の伸長は20%近く促進される。
  • ゼラニウム、サラダナ、ホウレンソウ、チンゲンサイなど(本葉が5~8枚の時点で供試)は、赤色LEDのみで栽培した場合、背軸側への葉の巻き込み(外巻き)が発生し、正常でない形態となる(図2)。青色LEDを用いて特定の葉に部分的な補光を行うと、その効果はその葉のみに表れ、照射方向と光強度に依存する。すなわち、葉の向軸面に照射した場合に有効であり、また、光強度が高いほど葉の巻き込みは抑制される。このような青色光に対する葉の展開の依存性は、メタルハライドランプで栽培した場合についても見られる。
  • 葉の組織観察によれば、青色LEDによる向軸面への補光の場合、葉の背軸側の表皮細胞の伸長は、赤色LEDのみで栽培した場合に比較して15~20%促進されるが、向軸側の伸長には差がない。青色光による補光が表皮細胞の伸長に関与し、葉の形態を制御している可能性がある。

成果の活用面・留意点

冬季に日射が不足する地域において、徒長などの形態的改善や苗の健苗化に応用が可能である。実用的装置の開発が必要である。

具体的データ

図1 ゼラニウムの花柄への補光(左)と処理開始後の花柄長の経日変化(右)
図1 ゼラニウムの花柄への補光(左)と処理開始後の花柄長の経日変化(右)

図2 青色LEDによる補光がサラダナの葉の展開値に及ぼす影響
図2 青色LEDによる補光がサラダナの葉の展開値に及ぼす影響

その他

  • 研究課題名:高出力小型光源を用いた補光制御技術の開発
  • 中期計画大課題名:農業施設の補強対策技術と空気・光環境改善技術の開発
  • 予算区分:交付金研究
  • 研究期間:2000~2002年度
  • 研究担当者:佐瀬勘紀、小綿寿志、石井雅久、森山英樹、福田直也
  • 発表論文等:1) Fukuda, N., Yoshinaka, Y., Ubukawa, M., Sase, S. and Takayanagi, K., Effects of light quality of metal halide lamp (MH), high pressure sodium lamp (HPS) and blue lamp (B) on the growth of petunia. J. Japan Soc. Hort. Sci. 71, 509-516, 2002.
                      2) Fukuda, N., Nishimura, S., Nogi, M. and Sase, S., Effects of localized light quality from light emitting diodes on geranium peduncle elongation, Acta Hortic., 580, 151-156, 2002.
                      3) 福田直也・山本桃子・長井俊明・佐瀬勘紀・西村繁夫, 赤色ならびに青色 発光ダイオード(LED)による光照射がレタスとチンゲンサイの葉の形状なら びに表皮細胞の大きさに及ぼす影響,園学雑,71別2, 2003.