積雪荷重を受けるパイプハウスの座屈を考慮した構造解析
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要約
パイプハウスは細長比の大きなアーチ部材から構成されており、座屈を生じる可能性もある。座屈に関する複数の>解析条件を骨組構造解析に導入することで、現場に即したパイプハウスの、より簡便で合理的な耐雪設計が可能になる。
- 担当:農業工学研究所・農地整備部・農業施設研究室
- 代表連絡先:029-838-7655

- 区分:技術及び行政
- 分類:参考
背景
豪雪地域に比較すると、東北地方太平洋側をはじめとする一部地域では恒常的な積雪荷重が小さい。そのため、融雪装置や補強部材の設置など、特別な雪害対策を施した園芸施設は少なく、温暖地域と同程度の耐力を有するパイプハウスが多く建設されている。積雪荷重下のパイプハウスの挙動の把握は、従来、応力解析にとどまっていた。しかし、パイプハウスは細長比の大きなアーチ部材から構成されており、座屈を生じる危険性が大きく、さらに合理的な構造設計が必要と考えられる。そこで、積雪荷重下のパイプハウスの正確な変形挙動や応力分布などを、より簡便に把握するために、従来の骨組構造解析に、直線に近似した脚部の座屈および円弧に近似したパイプハウスに対する円弧座屈の式を新たに導入した解析手法を開発する。
成果の内容・特徴
- 新たに開発した手法は、降伏に至る積雪荷重を、従来行われていた条件1に新たに2条件を加えた、以下の3条件から見積もる手法である。
(条件1)曲げモーメントで部材が塑性変形
(条件2)直線に近似したアーチパイプ脚部が座屈
(条件3)円弧に近似したアーチパイプが座屈(図1)
- 条件3は、Timoshenkoの円弧座屈式によって解析する(図2)。
- 図3に示す数種のモデル例に関して耐力を解析し、条件1におけるモデル#0の耐力を 100として指数化した。その結果、降伏に至る積雪荷重の最低値は、#0が77(条件3)、#4、#5が195(条件2)、#6、#7の最低値は258(条件3)であった(図4)。曲げモーメントよりも座屈で降伏が決定される構造があることがわかった。
- 積雪による被災調査を行った地区のパイプハウスは、#0、#4の形式が一般的である。調査地区では、#0に被災が多くみられ、一方、#4は被災を免れたものが多く、解析結果はこの被災傾向と合致する。
成果の活用面・留意点
具体的な補強設計を提示するために、接合部の初期すべりを始めとして、実際に生じることが予想される現象を、実験によって確認する必要がある。
具体的データ

図1 パイプハウスを円弧に近似

図2 Timoshenkoの座屈式の導入

図3 解析モデル

図4 各条件における指数化した降伏耐力の比較
その他
- 研究課題名:積雪荷重下における園芸施設骨組み構造の挙動の解明
- 中期計画大課題名:農業施設の補強対策技術と空気・光環境改善技術の開発
- 予算区分:交付金研究
- 研究期間:1999~2001年度
- 研究担当者:森山英樹・佐瀬勘紀・小綿寿志・石井雅久・In-Bok Lee・藤本直也・豊田 裕道
- 発表論文等:森山英樹・佐瀬勘紀・小綿寿志・石井雅久、積雪荷重が作用するパイプハウス挙動の構造解析、農業施設学会大会講演要旨、66-67、2002.