双発エンジンを用いた操舵のないGPS付ラジコン船による深浅測量技術の開発

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要約

農業用ため池の深浅測量を簡便に行う方法の開発を目的として、船に、GPSと測深器をつけたラジコンによる測量船を試作した。船の特徴は、双発エンジンにより小さい回転半径で方向が変えられる測深精度を上げるために、双胴船としたなどのため池に適している点にある。農業用ため池で実地試験を行い、性能を確認した。

  • 担当:農業工学研究所・水工部・河海工水理研究室
  • 代表連絡先:029-838-7567 Mail Address
  • 区分:技術及び行政
  • 分類:参考

背景

河口低平農地を防御するための海岸保全施設、導流堤等の河口施設、干潟の排水改良施設等が河口域の流況変化や地形変動に与える影響は、河口域から沿岸域の地形の変化を高精度に測量を行う必要がある。これまでの現地観測手法は櫓などの観測施設や係留ブイによる定点観測が主体であった。
本研究では、小型船による測量を想定し、河口域やダム湖より波の影響を受けにくい、ため池を試験対象に選び、流況観測を行いながら深浅測量を行う。ラジコンGPS深浅測量船の開発を目的とする。

成果の内容・特徴

船の特性 GPS船による測量には、(1)グラスボート等に人が乗り、これにGPSと測深器を搭載して計測を行う方法と、(2)計測専用の船に、GPSと測深器を搭載して、ラジコン等で操作する方法がある。特徴を表1に示す。今回は、波の影響を受けにくく船の安定性が高いの方法を検討した。図1に示す12Vのバッテリーで作動する2つの船外機を持ち、方向舵によらず、船外機の出力と回転方向だけで、方向を転換する船を試作した。図2に試作船を示す。

性能確認 調査対象に、図3の満水面積120,000m2のため池を選定した。観測は8月28日に行った。当日は風と波は小さかった。水面積は、満水の8割程度であった。堤長さは、400mである。図3のため池に青線で示した航路を目標に、ラジコンによる操縦を行った。運転の結果、突風のような横風を受けた場合には、一時的に制御困難になるが、それ以外は、ほぼ予定の航路を得た。試作船は特に、回転半径が小さくため池に適する。図4に調査結果から得た深浅図を示す。測定結果は堤体に向かって深くなり、また、図3の取水塔の周辺が深くなっており、定性的に妥当と判断できる。

成果の活用面・留意点

ラジコン船は、大きなエンジンを必要としないため比較的安価に試作できる。操縦に慣れが必要である。風の強い日には推進力が不足するので、利用を避けた方がよい。

具体的データ

図1 ラジコン船の制御システム
図1 ラジコン船の制御システム

図2 走行の状況(船長約2m)
図2 走行の状況(船長約2m)

図3 調査対象のため池
図3 調査対象のため池

図4 深浅測量結果
図4 深浅測量結果

表1 船の特徴
表1 船の特徴

その他

  • 研究課題名:GPSを利用した河口沿岸域の流況および水中地形観測手法の確立
  • 中期計画大課題名:湿地・干潟の土砂堆積制御工法及び河口排水管理技術の開発
  • 予算区分:交付金研究
  • 研究期間:2001~2002年度
  • 研究担当者:丹治 肇、中矢哲郎、桐 博英、藤井秀人
  • 発表論文等:1) 丹治 肇、中矢哲郎、桐 博英、GPSを用いたため池の深浅測量について、農業土木学会関東支部大会講演会要旨集、2001.