底泥土を有効利用したため池の新改修工法

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要約

従来は廃棄していたため池の底泥土にセメントを混ぜ固化した後に、一度破砕することにより普通の土と同じような変形性をもつ固化土を作成し、締固めを行い盛土に再利用する工法で、コスト縮減とリサイクルが可能になる。

  • 担当:独立行政法人農業工学研究所・造構部・上席研究官
  • 代表連絡先:029-838-7681 Mail Address
  • 区分:技術及び行政
  • 分類:普及成果情報

背景

ため池は、築造年代が古く老朽化して、ため池周辺の市街地化が進んだ地域では、漏水だけでなく、地震や豪雨時のため池決壊による二次災害が懸念されるため、緊急に改修が必要とされている。このような地域では、(1)住宅や民地が迫り事業用地が不足する場合が多い、(2)堤体の改修・補強に必要な盛土材や遮水材をため池周辺で確保しにくい、(3)ため池に底泥土が堆積し、貯水容量の減少、水質の悪化等の問題が生じている。また工事に伴う騒音・振動等が住環境を損なわないように進める必要がある。改良した底泥土を利用する新しいため池改修工法を開発してこの問題を解決する。

成果の内容・特徴

  • 本工法はため池の底泥土にセメントを混ぜ、固化した後に破砕して締固めを行い盛土材に再利用する工法である(図-1、2)。小さなひずみで最大強度を示す特徴をもったセメント固化土(初期固化土)を、一度破砕することにより大きなひずみで最大強度が発生する土(破砕・転圧土)になり、クラックの入りにくいものとなる(図-3)。また破砕の粒径を変えることにより盛土の用途に合わせた透水係数を得る事も可能になる(図-4)。
  • 掘削した旧堤体土に、底泥土、セメントを混入して、高強度の築堤材として再利用するため、旧堤体と同じ断面であっても構造的に強いため池に改修できる。
  • 盛土材を確保するための土取場造成による環境への影響、底泥土を捨てるための土捨場の造成などの周辺環境への影響が少ないなど、環境にもやさしい工法である。また、この工法では、底泥土の廃棄費用、築堤材のための新たな用土購入が不要などの直接的なコスト縮減が期待され、事業経費の縮減を図りながら災害に強いため池にリニューアルすることが可能である。

成果の活用面・留意点

  • 実際の工事では砕・転圧土を保護する為に覆土をすることが重要である。
  • ほとんどのため池底泥土に適用可能であるが、セメント混入量、破砕時期を最適化するため、それぞれの現場で土質試験を行う必要がある。

具体的データ

図1 破砕・転圧土盛土工法の概要
図1 破砕・転圧土盛土工法の概要

図2 腹付け盛土・遮水材への適用例
図2 腹付け盛土・遮水材への適用例

図3 初期固化土と破砕・転圧土の応力~ひずみ関係の例(材齢10日)
図3 初期固化土と破砕・転圧土の応力~ひずみ関係の例(材齢10日)

図4 透水係数に及ぼす破砕粒径の影響(材齢10日)
図4 透水係数に及ぼす破砕粒径の影響(材齢10日)

その他

  • 研究課題名:セメント改良土不均一地盤の水理・強度特性の解明
  • 中期計画大課題名:豪雨特性やため池崩壊機構の解明及び防災予測技術の開発
  • 予算区分:交付金、その他(受託)
  • 研究期間:2001~2003年度
  • 研究担当者:谷 茂・田頭秀和
  • 発表論文等:1) 福島伸二・谷茂・北島明・石黒和男、固化処理した底泥土を砕・転圧した築堤土の目標強度設定、土木学会論文集、No.715/III/-60、165-178、2002
                      2) 北島明・福島伸二・石黒和男・谷 茂・田頭秀和、固化土塊を含む土の一面せん断強度特性、第37回地盤工学研究発表会講演要旨集、829-830、2002
                      3) 谷 茂、福島伸二・北島 明・石黒和男,老朽ため池における砕・転圧盛土工法による提体改修法、農業土木学会誌、70-12、2002
                      4)特許、「ため池の底泥を用いた盛土材の作成方法およびため池の提体の補修、補強方法並びに破砕機」、特許第3241339号 (2002.10.19)
                      5) 特許出願中、「土構造体の補強方法」、特願2001-21025号