レジンコンクリート製パネルによる水路再生内張工法

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要約

水路内面に平滑性や耐摩耗性に優れるレジンコンクリート製パネルを補修材として用いた水路再生内張り工法により、ひび割れや摩耗などがコンクリート躯体に発生し機能低下した農業用水路の補修を行うことができる。

  • 担当:農業工学研究所・造構部・施設機能研究室
  • 代表連絡先:029-838-7572 Mail Address
  • 区分:技術及び行政
  • 分類:参考

背景

農業用水路の改修においては、改修区間を取り壊し・撤去し、新たにコンクリートを打設する工法が一般的である。しかし、こうした工法では、工事用道路などの用地の確保、コンクリート解体廃棄物の処理などが必要で、工事費の相当部分を仮設工事費が占める。さらに、水路が住宅地に近接している場合には、合理的な機械施工が行えないのみならず、工事の騒音防止や交通の迂回など、種々の対策が必要となる。そこで、当該既設水路を取り壊すことなく補修する工法として、レジン(樹脂)コンクリートの平滑性や耐摩耗性に着目したレジンコンクリート製パネルによる水路再生内張工法を開発した。

成果の内容・特徴

  • 開発したレジンコンクリート製パネルを図1に、その断面図を図2に示す。使用した樹脂は、(1)板状に製品化するために低粘度化が可能であり、(2)耐候化措置がとれ、(3)実績があり安価である、という条件を満たす不飽和ポリエステル樹脂を使用した。
  • レジンコンクリート製パネルの配合は、(1)パネル製作に必要なワーカビリティが確保できること、(2)なるべく安価で運搬時や施工面で必要な曲げ強度(20MPa以上)を有すること、を目標として、骨材:樹脂の配合割合を80%:20%とした。
  • レジンコンクリート製パネルの力学的性質を表1に示す。(1)既存コンクリートに貼り付けることにより、大きな複合強度が得られる、(2)パネルの摩耗量はモルタルと比較して70%と優れた耐摩耗性を示す、などの特長を有する。
  • 1,000mm×1,000mmの断面をもつ20m水路における水理実験の結果、レジンコンクリート製パネルの粗度係数は0.013と平滑性に優れ、本施工法では板厚1cm分の断面縮小があるにもかかわらず通水能力は流量比で17%(コンクリート水路:6.444m3/s,レジンコンクリート製パネル:7.539m3/s)向上することが明らかとなった。
  • レジンコンクリート製パネルの接着について接着剤塗布工法、接着剤含浸シート工法、接着剤注入工法、通電式接着シート工法、の4工法を開発し、総合評価を行った(表2)。その結果、接着材注入工法が完全密着可能で安価であることが明らかとなった。現在、接着材注入工法による現地実証試験を進めている。

成果の活用面・留意点

最適工法は接着剤注入工法であるが、現場条件により接着剤含浸シート工法を採用する必要がある場合には、パネルと既設コンクリート躯体との接着不均一に起因するひび割れが懸念されることから、既設コンクリートとの密着性を十分確認する必要がある。

具体的データ

図1 レジンコンクリート製パネルの写真
図1 レジンコンクリート製パネルの写真

図2 レジンコンクリート製パネルの構成
図2 レジンコンクリート製パネルの構成

表1 レジコン製パネル物性試験一覧
表1 レジコン製パネル物性試験一覧

表2 レジンコンクリート製パネルと既設コンクリートとの粘着工法の総合評価
表2 レジンコンクリート製パネルと既設コンクリートとの粘着工法の総合評価

その他

  • 研究課題名:水路系コンクリート構造物の内張り補修技術の開発
  • 中期計画大課題名:材料、構造、施設機能の評価診断手法の開発
  • 予算区分:交付金研究
  • 研究期間:2001~2002年度
  • 研究担当者:石村英明(関東農政局より併任)、渡嘉敷勝、長束 勇、森 充広、藤本直也、直江次男、森山英樹、中 達雄、新技術研究開発組合
  • 発表論文等:1) 藤本直也・長束 勇、農業施設構造物のコンクリート劣化の現状分析と補修の試み、農土誌、69(5)、7-11、2001.
    2) 長束 勇・中 達雄・藤本直也・直江次男・渡嘉敷勝・森山英樹・荒川行志・生田目 豊・向後 誠・五十嵐義廣・田熊 章、水路の補修構造およびその施工方法、特願2002-114994.
    3) 長束 勇・直江次男・渡嘉敷勝・森 充広・田熊 章、水路系コンクリート構造物の内張り再生工法の開発、農業土木学会講演要旨集、398-399、2002.