3成分アンテナにより地盤探査能率・精度を高めたVLF-EM法電磁探査装置

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要約

3軸電子コンパスを組み込んだ3成分アンテナVLF-EM法電磁探査装置の開発により、アンテナの姿勢調整が不要となり、地盤探査能率を大幅に向上できる。さらに送信局方向の同定により、電波の受信品質の評価ができ探査精度が向上する。

  • 担当:農業工学研究所・造構部・土木地質研究室
  • 代表連絡先:029-838-7578 Mail Address
  • 区分:研究
  • 分類:普及成果情報

背景

VLF-EM(very low frequency electromagnetic)法電磁探査は、VLF帯の通信電波を利用し、断層等の地盤の比抵抗異常を検出するために用いられている。VLF-EM法は大地と非接触で探査可能なため、広域的な地盤調査に適しているが、従来の探査装置はVLF波送信局の方向にあわせて2成分アンテナの方向及び角度を調整する必要があった。
そこで、アンテナを3成分とし、任意の角度での測定を可能にすることにより探査能率を向上させたVLF-EM法電磁探査装置を開発した。

成果の内容・特徴

  • 本探査装置は互いに直交する2成分アンテナ、信号の位相検波、増幅を行い各成分毎の磁場強度、位相差を測定する受信器、アンテナの姿勢情報を出力する2軸電子コンパス、探査位置の座標を得るためのGPS受信器及び受信器・コンパス・GPSからのデータを収録し磁場の伏角・楕円率・方位角を計算・出力する小型PCから構成される(図1)。
  • 一般のVLF-EM法探査装置では水平方向の1次磁場と地盤の誘導によって生じる鉛直方向の2次磁場の強度比を測定するが、本装置では1次磁場と2次磁場の合成磁場が形成する分極楕円の形状(楕円率、長軸の伏角)を測定する。比抵抗法電気探査が実施された地すべり地において、開発した装置による分極楕円測定法(図2(b))と従来装置による磁場強度比測定法(図2(c))の探査結果を比較した。その結果、両者とも比抵抗断面図(図2(a))の深度6m程度までの高比抵抗部(↑)および低比抵抗部(↓)に対応するピークが検出でき、同等の探査能力を有することが確認できた。開発した装置では1点の探査時間は1分以内であり、アンテナの位置調整が不要な分、従来装置に比べ探査能率に優れる。
  • VLF-EM法電磁探査では安定した1次磁場下における2次磁場強度が探査対象となるが、開発した装置では分極楕円長軸の方位角(送信局方向)の変化により探査時の1次磁場の安定性を把握できる。このため、磁場強度比のみを測定する装置に対し、受信品質の評価が可能であり、探査精度の向上が図られる。

成果の活用面・留意点

  • 本探査法で利用するVLF波は潜水艦通信用電波であり、送信が休止される場合がある。
  • 現在受信器の位相調整は手動であり、さらに自動化を検討する必要がある。

具体的データ

図1 開発した装置のブロック図
図1 開発した装置のブロック図

図2a
図2b
図2c
図2 本装置による探査例(b)比抵抗法電気探査(a)、従来型VLF-EM法(c)との比較

その他

  • 研究課題名:VLF法による地盤導電率変動監視手法の開発
  • 中期計画大課題名:農業用施設の構造的・水理的な安定性診断手法等の開発
  • 予算区分:交付金研究・その他(受託)
  • 研究期間:2000~2001年度
  • 研究担当者:中里裕臣・黒田清一郎・奥山武彦・長束 勇・畑山元晴(農村振興局)
  • 発表論文等:1)3成分アンテナを用いるVLF-EM法電磁探査装置(特許出願中).
    2)中里裕臣・朴 美京・黒田清一郎・奥山武彦、VLF電磁探査法による比抵抗モニタリング、H14農業土木学会講演要旨集、718-719、2002.