連続分布型計測技術による地中歪み観測システム

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要約

ケーブル型センサをTDR(Time Domain Reflectometry,時間領域反射計測)法で計測する連続分布型計測技術を利用した地中歪み観測システムによって、ボーリング孔に沿った歪みの連続分布が容易に計測できる。地下埋設用センサは低コストで耐久性に優れている。

  • 担当:農業工学研究所・造構部・土木地質研究室
  • 代表連絡先:029-838-7577 Mail Address
  • 区分:技術及び行政
  • 分類:普及成果情報

背景

地すべり監視などの目的で行う地中歪み計測の代表的方法であるパイプ歪み計,孔内伸縮計はある深度における「点」的な計測手法であり、最大深度もしくはセンサ間隔に限界があった。ケーブル型センサを用いることによって、ケーブルに沿った地中歪み分布を連続的に観測できる計測システムを開発した。

成果の内容・特徴

  • 本システムはボーリング孔内に設置した光ファイバーや同軸ケーブルを用いたケーブル型センサに歪みが生じた際の散乱光や反射電磁波の変化を時間領域で計測し、伝播速度を基に位置情報に変換することによって地下深部まで、連続的な歪み分布を得ることができる。また、TDR計測器本体の繰り返し測定によって経時観測を容易に行えるので、長期連続観測を省力化できる。
  • 歪み計測用光ファイバケーブルセンサは、通信用ケーブルの流用や心線を計測対象に直接貼付するものではなく、変形追随性、耐久性に優れ野外での設置も容易なカシメ付き金属管外装型光ファイバケーブルセンサを採用した(図1)。
  • 上記のセンサをアルミケーシング管の外周の4分割点に2本ずつ引張力を与えながら貼付する方法を開発した(図2)。この方法により、引張および圧縮の両方向の歪みを検出できること、また曲げモードの変形の際には変形方向も検知できることを4点曲げ試験によって確認した(図3)。
  • 光ファイバケーブルセンサの歪み検出範囲は1mあたり0.1mm~数mmである。それに対し同軸ケーブルセンサのせん断歪み検出範囲は数mm~数cmである。このような感度の異なる複数種のケーブルセンサの複合設置(図4)によって、計測可能領域を拡大することができる。

成果の活用面・留意点

本システムは地中歪み以外の構造物などの歪み測定にも応用できる。センサは安価であるが、計測器本体が比較的高価であるため、スケールメリットが期待できる大規模地すべりや地すべりブロックが密集する地域等への適用が有効である。

具体的データ

図1 歪み計測用光ファイバセンサの概要
図1 歪み計測用光ファイバセンサの概要

図2 連続分布計測に基づく地下地盤変状観測システムの概要
図2 連続分布計測に基づく地下地盤変状観測システムの概要

図3 歪みセンサー付きパイプケーシングの4点曲げ試験結果
図3 歪みセンサー付きパイプケーシングの4点曲げ試験結果

図4 ケーブル型センンサを複合設置したボーリング孔の断面図
図4 ケーブル型センンサを複合設置したボーリング孔の断面図

その他

  • 研究課題名:地すべり活動監視のための地表面変位及び地すべり面センシング技術の開発
  • 中期計画大課題名:地震災害及び地すべりの要因並びに土構造物の安全性の解明とセンシング手 法等の開発
  • 予算区分:交付金研究
  • 研究期間:1999~2002年度
  • 研究担当者:黒田清一郎、中里裕臣、奥山武彦、長束 勇、畑山元晴、第一高周波工業、日鐵溶接工業株式会社、新技術研究開発組合
  • 発表論文等:黒田清一郎・中里裕臣・奥山武彦・長束 勇、連続分布型計測システムによる野外地下観測技術、農業土木学会誌,71(1)、31~34、2003