都市近郊での耕作放棄およびスプロールによる外部不経済発生の予測手法

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要約

国土数値情報等の土地利用データとアンケート調査とを統合し、確率的選択モデルを用いて分析することにより、少ない設問数と限られたサンプル数から、耕作放棄発生およびスプロールの進行に伴う外部不経済の発生を予測することができる。

  • 担当:農業工学研究所・農村計画部・地域計画研究室
  • 代表連絡先:029-838-7549 Mail Address
  • 区分:技術及び行政
  • 分類:普及成果情報

背景

都市近郊における耕作放棄地の発生や宅地のスプロール化は、土地の有効利用上の問題だけでなく、周辺の農業生産、居住環境に様々な悪影響(外部不経済)を与える。本研究では、耕作放棄地およびスプロールの発生により、どの程度の農業生産上、居住環境上の問題が生じるかを定量的に予測する手法を開発する。

成果の内容・特徴

〔予測の手順(図1)〕

  • 土地利用データは国土数値情報3次メッシュ(1km2)単位に、アンケートや集落センサスからメッシュ耕作放棄地率(水田、畑)を算出する。また、国土数値情報100mメッシュデータからメッシュ農-住混在度(水田-建物JOIN値、畑-建物JOIN値:なお、JOIN値とは、異なる用途のセルの接触数)を算出する(図2)。
  • 住民サイドの外部不経済の予測には、回答者の居住メッシュおよび居住地から農地、耕作放棄地までの距離、性別、年齢等の属性を把握する。
  • 農家サイドの外部不経済の予測には、回答者が耕作する農地が含まれるメッシュをアンケートにより把握する。併せて、属性データとして経営耕地面積(水田、畑)を把握する。
  • アンケート調査により、住民サイド(または農家サイド)における外部不経済の項目(例:「近隣の農作業騒音に対して不満を感じるか」、「近隣の耕作放棄地からの病害虫発生に対して不満を感じるか」等)に対する問題指摘の有無を把握し、確率的選択モデルにより、問題を指摘する住民(または農家)が一定割合に達するに至る土地利用データの具体値を求める。

〔推計結果の例〕

  • 農家サイドの一定割合が問題と感じるに至る土地利用データの具体値(ここでは耕作放棄地率)を表1のように予測することが出来る。この結果、大規模層(3ha以上)の多くが問題と感じていても、平均的規模(0.5ha)の農家は依然として問題と感じない事態が予想される。
  • また、住民サイドの一定割合が問題と感じるに至る土地利用データの具体値についても同様に予測できる。例えば、図3はスプロールの進行に伴う農作業騒音問題の指摘割合の予測結果を示している。

成果の活用面・留意点

  • 本方法の適用により、地区別に問題指摘率を求める方法よりもはるかにサンプル数を節約可能である。設問数も限定可能なため、他のアンケートとの同時実施も容易である。
  • 予測結果を地域住民に提示することにより、土地利用の混乱を予防するための、保全活動のための合意形成の判断材料としても活用できる。

具体的データ

図1 分析の手順
図2 土地データの整備例

その他

  • 研究課題名:住民との関係を考慮した農地利用システムの解明
  • 関連する中期計画大課題名:農業・農村及び事業における多面的機能の評価手法の開発
  • 予算区分:交付金研究
  • 研究期間:2001~2003年度
  • 研究担当者:八木洋憲、福与徳文、芦田敏文
  • 発表論文等:1) 八木洋憲、非農業土地利用の増大に伴う農業への外部不経済発生の把握と予測、農村計画論文集、5、79-84、2003.
                      2) 八木洋憲・徳田博美・大浦裕二・高橋明広、農業生産による地域居住環境への影響と土地利用計画、農業土木学会誌、71 (12)、17-20、2003.
                      3) 「耕作放棄地の分析方法を開発」、日本農業新聞、2003/11/28.