農林業部門の環境便益と環境負荷を取り入れた農林業環境経済統合勘定

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要約

農業農村整備事業も含めた農林業部門による環境便益(多面的機能の経済的評価)と環境負荷を取り入れた環境経済統合勘定を開発した。これにより全国レベルで環境への正と負の影響を含めた農林業部門の総合的経済評価ができる。

  • 担当:農業工学研究所・農村計画部・総合評価研究室
  • 代表連絡先:029-838-7667 Mail Address
  • 区分:技術及び行政
  • 分類:参考

背景

現在、農業農村整備の個別事業地区については、各種事業の評価のためのガイドラインやチェック・リスト、マニュアルなどが整備され、農業農村整備事業全般について費用対効果分析が実施できるような条件が整備されている。しかし、農業農村整備事業の環境面での影響を全国レベルで評価する手法は定まっていない。 そこで、農業農村整備事業を含めた農林業部門による環境便益(多面的機能の経済的評価)および環境負荷を環境経済統合勘定により全国レベルで総合的に評価する手法を開発する。

成果の内容・特徴

  • 従来の環境経済統合勘定の枠組みと比較して農林業環境経済統合勘定(表1)には、次のような特徴が備わっている。
    1) 農林業部門という特定の産業部門を評価する体系である。
    2) 産業活動が環境に与える負と正の効果(環境負荷と環境便益)の両方を評価対象とした体系である。
    3) 農林業部門における生産活動のみならず、農林業部門に関連した社会資本がもたらす環境便益も評価対象としている。
    4) 環境負荷の項目は浮遊粒子状物質(SPM)や窒素酸化物(NOx)などの11種類、環境便益は洪水防止機能などの10機能である。
  • 本枠組みに基づいて農林業に由来する環境負荷と環境便益を1995年(名目値)の日本全国で試算したところ、環境負荷は10兆590億円、環境便益は47兆6260億円(図1)との試算結果が得られた。

成果の活用面・留意点

  • 本成果は、農業農村整備事業に関する制度の検討等での活用が期待される。
  • ここに示した結果を含めて、現時点ではすべての計数を得るためには環境経済統合勘定の基本となる国民経済計算の評価原則と整合しないデータを利用する必要がある。今後は、国民経済計算に合致したデータを得るための方法を検討する必要がある。

具体的データ

表1 農林業環境経済統合勘定の枠組み
図1 農林業の環境便液の試算結果

その他

  • 研究課題名:農業農村整備事業にかかる多面的機能及び環境負荷の環境経済統合勘定による定量的評価手法の開発
  • 関連する中期計画大課題名:農業・農村及び事業における多面的機能の評価手法の開発
  • 予算区分:交付金プロ(環境勘定)
  • 研究期間:2001~2003年度
  • 研究担当者:合崎英男、出村克彦(北海道大)
  • 発表論文等:1) 合崎英男・林 岳・出村克彦・山本 充・三橋初仁、農業の持つ多面的機能のための環境経済統合勘定のフレームマトリックス開発、第53回農業土木学会関東支部大会講演会講演要旨、67-68、2002.
                      2) 林 岳・山本 充・出村克彦・合崎英男・三橋初仁・國光洋二、環境経済統合勘定による農林業の環境便益と環境負荷の評価、環境経済・政策学会2003年大会報告要旨集、232-233、2003.林 岳・山本 充・合崎英男・出村克彦・三橋初仁・國光洋二、マクロ環境勘定による農林業の多面的機能の総合評価に関する研究、商学討究、小樽商科大学、54(4)、107-130、2004.