棚田景観の評価の構造と関係する物理指標

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要約

写真画像を用いた棚田景観の感性評価試験を行った結果、棚田景観の評価は「統一感」「自然性」「複雑さ」の因子によって説明される。また、因子と関係する物理指標として、全可視田の一筆面積の変動係数、畦畔延長-画像周長比がある。

  • 担当:農業工学研究所・農村環境部・景域研究室
  • 代表連絡先:029-838-7583 Mail Address
  • 区分:研究
  • 分類:参考

背景

水田が有する環境保全機能の一つとして、景観保全上の機能が広く認識されつつある。特に棚田が有する景観保全機能は、棚田百選の選定にみられるように、高く評価されている。しかしながら、棚田の立地する山間地域の農村景観については、地形や景観構成要素の複雑さから、景観に対する評価構造を明確にすることは困難であった。そこで、棚田景観の評価構造を明らかにするとともに、関係する物理指標の解明を行う。

成果の内容・特徴

  • 異なる視点場から撮影した棚田の写真画像を用いて、SD法による棚田景観の感性評価試験(被験者:成人男女51名)を実施した。結果、棚田景観の評価に関係する因子が第3因子まで抽出された(表1)。各評価項目との関係から、第1因子は「統一感」、第2因子は「自然性」、第3因子は「複雑さ」を示す評価因子と考えられる。
  • 好ましい棚田景観を表す選好率と「統一感」との間には正の相関がある(相関係数:0.825,1%水準で有意)(表2)。既往研究では、好ましい水田景観の評価要因として、「広がり感」と「自然性」が指摘されているが、棚田景観においては「統一感」が好ましい景観の評価に結びついている。
  • 棚田景観の写真画像を、田面,畦畔などの構成要素(5項目)ごとに塗り分け、画像内に占める画素数を計測することにより、物理指標値を算出した(図1)。
  • 各景観の因子得点を従属変数に、物理指標値を独立変数に回帰分析を行った結果、いくつかの物理指標値と評価因子の間に関係がみられた。「統一感」は、全可視田の一筆面積の変動係数と関係がある(図2)。「複雑さ」は、全可視田の畦畔延長-画像周長比(各筆の畦畔及び法面との境界延長を画像周囲の長さで除した値)と関係がある(図3)

成果の活用面・留意点

本研究での知見を活用することにより、棚田においても、人の景観評価、評価と関連する物理指標を踏まえた保全・整備のあり方を検討していくことが可能となる。

具体的データ

表1 棚田景観の評価の因子分析結果

その他

  • 研究課題名:水田地域における景域特性と景観評価との関係解析
  • 関連する中期計画大課題名:環境保全機能の総合的解析に基づく景域計画策定手法の開発
  • 予算区分:交付金研究
  • 研究期間:2001~2003年度
  • 研究担当者:栗田英治、木村吉寿、松森堅治、上村健一郎
  • 発表論文等:1) 木村吉寿・斎藤元也・栗田英治・上村健一郎・長利洋、手持ちデジタルカメラ画像による棚田景観の特性評価、日本写真測量学会平成15年度秋季学術講演会発表論文集、113-116、2003.
                      2) 木村吉寿・栗田英治・松森堅治・斎藤元也・上村健一郎・長利洋、棚田景観の特徴と評価および意義、システム農学講要、19別2、62-63、2003.