野外作業把握のための固定式バルーン観測システム

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要約

多数の作業者により実施する草刈り共同作業の実態を、上空から動画撮影し、画像解析処理により、各作業者の位置・作業状況の判別・各作業者の実作業時間・草刈り面積を定量的に把握するシステムである。

  • 担当:農業工学研究所・農村環境部・景域研究室、農村計画部・上席研究官
  • 代表連絡先:029-838-7583 Mail Address
  • 区分:研究
  • 分類:参考

背景

豊かで美しい農村景観は、地域の取り組みや農家各戸による適度な維持管理の基に成り立っている。地域の取り組みとして長年に行われている草刈り共同作業に関して、その作業実態を明らかにした例は少ない。また、多数(数十人規模)が入り混じって行われる草刈り共同作業の実態を地上から観測すると、草陰に隠れて誰がどこをどれだけ刈っているのか十分に把握することは困難であった。このため、本研究では新たに固定式バルーン観測システムを開発し、多数の作業者毎の位置、作業状況の判別、実作業時間、草刈り面積といった草刈り状況を定量的に把握する。

成果の内容・特徴

  • 固定式バルーン観測システムは、バルーンにヘリウムガスを充填して上昇させ、一端を固定したワイヤーロープをウインチにより上下させ最適な位置で空中に固定できる方式を採用する。そして、バルーン下部に搭載したデジタルビデオカメラにより作業状況を上空から撮影する(図1、2)。
    撮影した動画データの解析により、多数の作業者毎の作業状況をコマ送り(30コマ/秒単位)で実作業時間(移動と実作業の判別)、作業範囲等を確認する。また、確認した作業範囲のデジタル静止画像を幾何補正して地籍図等の平面図に投影し、作業面積を算出する。さらに、作業時間と作業面積から作業効率を算出する(図3、表1)。
  • 本システムでは、作業面積や時間の算出のために作業者に対して特定エリア内への誘導や計器の装着などの制約がなく、実際の草刈り状況を詳細に把握できる特徴を持ち、広範囲で死角の少ない計測ができる。
  • 本システムでの計測は数人(3人程度)で可能であり、従来の草刈り作業者毎に調査者を配置する方法に比べ、少人数で精緻な調査ができる。

成果の活用面・留意点

本システムは、草刈り共同作業や収穫など多数の作業者が同時に行う行動を解析、定量する場合に活用できる。なお、風速は約5~6m/s以下で風向きが安定していれば、撮影が可能であり、画像解析上、晴れていることが望ましい。

具体的データ

図1 固定式バルーン観測システムの概略図
表1 固定式バルーン観測システムによる草刈り作業効率算定表

その他

  • 研究課題名:集落域における景観管理効果の算定
  • 関連する中期計画大課題名:農業の持つ多面的機能及び環境負荷の経済的評価
  • 予算区分:交付金プロ(環境勘定)
  • 研究期間:2001~2003年度
  • 研究担当者:木村吉寿、上村健一郎、筒井義冨
  • 発表論文等:1) 木村吉寿・上村健一郎・筒井義冨、バルーン観測による草刈共同作業の定量的把握、システム農学会秋季シンポジウム研究発表会要旨集、18(2)、63-64、2002.
                      2) 木村吉寿・上村健一郎・筒井義冨、集落域における草刈管理による景観管理効果、農業土木学会大会講演会講演要旨集、742-743、2003.