地域最大降雨量データによる洪水比流量包絡式のクリーガ式及びグループ式の適合性評価

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要約

洪水比流量包絡式のクリーガ式と角屋らのグループ式について、地域最大降雨量データを用いてDAD解析と合理式で洪水比流量を求めて比較し、小流域の場合にグループ式の方が適合性がよいことを明らかにした。また、地域最大降雨量データで地域係数の適合性を評価できる。

  • 担当:農業工学研究所・地域資源部
  • 代表連絡先:029-838-7536 Mail Address
  • 区分:技術及び行政
  • 分類:普及成果情報

背景

設計基準「ダム」では、ダムの設計洪水流量は「A項流量」、「B項流量」、「C項流量」の最大値を採用することになっている。流域面積が小さいダムが多い農業用ダムでは、北海道を除いて、「C項流量」の1つであるクリーガ式の値が最大となるため、ほとんどのダムで採用されている。しかし、クリーガ式の値が大きすぎるのではないかという意見を多く、適用限界を明らかにする必要がある。一方、角屋・永井によって、半理論的に洪水比流量包絡式が提案され、設計基準「ダム」にグループ式として採用されているが、流域面積が1.0~20km2附近ではクリーガ式の値が大きくなるため、適合性の評価が必要になっている。しかし、小流域の場合に洪水流量の観測データがほとんどないため、比較検討できなかった。そこで、クリーガ式とグループ式の曲線形状に着目して、両式の適用条件を検討する。また、桑原によって収集された地域最大降雨量データをもちいてDAD解析と合理式で洪水比流量を求め、クリーガ式とグループ式の適合性を評価する。

成果の内容・特徴

  • 洪水比流量包絡式の曲線形状を見ると、クリーガ式は流域面積が1.0km2で洪水比流量の極値を持つので、適用条件は流域面積が1.0km2以上になる。グループ式は流域面積が6,568km2で洪水流量の極値を持つので、適用条件は流域面積が6,568km2以下になる。
  • 地域最大降雨量データからDAD解析と合理式で洪水比流量を求めると、図1に関東地方の例を示すように、小流域の場合にクリーガ式の洪水比流量よりもグループ式洪水比流量に近くなるため、グループ式の方が適合性が良いと言える。(設計基準「ダム」では流域面積が20km2以下を小流域としている)
  • 地域最大降雨量データを用いてDAD解析と合理式で流域面積1.0km2の洪水比流量を求め、この値にあうクリーガ式の地域係数C'とグループ式の地域係数K'を求めると表1となる。設計基準「ダム」に採用されているクリーガ式の地域係数C及びグループ式の地域係数KC'K'を比較すると北海道を除いて、グループ式の地域係数KK'とほぼ一致する。

成果の活用面・留意点

北海道地方、東北地方、関東地方、紀伊南部地方、九州北部地方、九州四国南部地方及び全国に対して最大降雨量データで洪水比流量包絡式の適合性を検討した結果である。また、北海道地方は最大降雨量に対して最大洪水比流量が小さくなるので、A項流量が使われる。

具体的データ

図1 関東地方最大雨量による洪水比流量曲線式の評価例
表1 流域面積1.0の洪水比流量

その他

  • 研究課題名:GIS等を利用した地形変化量の解析
  • 関連する中期計画大課題名:農地基盤情報収集技術及び土地資源評価手法の開発
  • 予算区分:交付金研究
  • 研究期間:2003~2004年度
  • 研究担当者:大西亮一、小川茂男、島 武男
  • 発表論文等:1) 大西亮一・加藤 敬・今泉眞之・丹治 肇、最大降雨量データによる洪水比流量包絡式適合性の考察、農土論集、No.225、85-93、2003.
                      2) 大西亮一・加藤 敬・今泉眞之・丹治 肇・松田 周、最大降雨量データによる洪水比流量包絡式地域係数の考察、農業工学研究所報告、第43号、23-34、2004.