有機性資源活用機能の経済的評価

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要約

全国で年間4,000万tの堆肥の製造及び農地還元利用を想定し、窒素の動態に着目して経済的評価を行った。[1]堆肥の積極的購入に伴う経費、[2]温室効果ガス発生抑制に伴う経費、[3]水質保全対策に伴う経費、[4]廃棄物最終処分に伴う経費を検討し、評価額を約240億円/年と算出した。

  • 担当:農業工学研究所・地域資源部・資源循環研究室
  • 代表連絡先:029-838-7507 Mail Address
  • 区分:行政及び技術
  • 分類:参考

背景

循環型社会形成のための様々な施策が実施されつつある。しかし、現在の経済価値と技術水準の下で、農業生産と環境の両方にプラスの影響を及ぼし、採算性のとれる有機性資源の利活用システムを構築するには、多くの課題がある。本研究では、有機性資源の利活用推進に対する理解を深める一助とするため、農業・農村の持つ多面的機能の1つとしての有機性資源活用機能を経済的に評価することを目的とした。

成果の内容・特徴

  • 有機性資源活用機能の経済的評価を行うに際しての論点として、評価の枠組み、対象とする有機性資源と再資源化の方法、プラスとマイナスの側面、時空間の取り扱い、代替法における比較対象等について整理した。
  • 有機性資源活用機能を「有機性廃棄物を農村地域において持続的な生産を保証できる方法で再資源化して利用することにより、環境保全および廃棄物処理に要する費用を節減する機能」と解釈し、2010年の政策目標として全国で年間4,000万tの堆肥(湿潤状態)の製造・農地還元利用を想定し、図1に示す窒素の動態に着目して経済的評価を行った。評価項目としては、表1に示す[1]堆肥の積極的購入、[2]温室効果ガス発生抑制、[3]水質保全対策、[4]廃棄物最終処分に伴う経費を検討した。
  • 評価額は、評価の考え方や想定により変化する。このため、表1に示すようにいくつかを変数とし、各々の評価項目毎にどの程度の差異が生じるかを認識できるようにした。重複カウントの懸念を少なくするため、評価の考え方の性格から[1]と[2]~[4]の和のうち小さい方をとる。代表的と考えられる想定による評価額は約240億円/年、評価額の変化幅は100~1,200億円/年程度であると試算した。

成果の活用面・留意点

評価は、比較的定量化が容易なものに限っている。このため、有機性資源の活用を担う生物の機能、地域社会の活性化、健康予防など本質的に重要なものが含まれていない。
経済的評価に当っては、現時点では様々なアプローチから評価を試み、どの方法が誰に対して説得力を持つかを見極めることが重要である。

具体的データ

図1 農・牧草地における窒素の主な流れと形態
表1 有機性資源活用機能の経済的評価方法と産出額

その他

  • 研究課題名:農村地域が持つ環境面の多面的機能の経済的評価
  • 関連する中期計画大課題名:農業・農村及び事業における多面的機能の評価手法の開発
  • 予算区分:交付金プロ(環境勘定)
  • 研究期間:2001~2003年度
  • 研究担当者:柚山義人、森 淳、中村真人、端 憲二、長利 洋
  • 発表論文等:柚山義人・端 憲二・長利 洋、有機性資源活用機能の経済的評価方法、農土誌、71(12)、27-30、2003.