懸濁液の電導度計測を用いた粉炭の性能評価法

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要約

炭の性能は電導度測定による炭化度で簡易的に判定できる。粉炭の電導度測定では接触点抵抗が大きく、不安定であるため、懸濁液中で粉炭電導度を測る方法を開発した。この等電導度点を見つける測定法は、粉炭電導度と炭化温度との関係を良く再現する。

  • 担当:農業工学研究所・地域資源部・資源循環研究室
  • 代表連絡先:029-838-7633 Mail Address
  • 区分:研究
  • 分類:参考

背景

有機性廃棄物の炭化による再利用が進められ、その炭化の程度を簡易的に知る方法が求められている。その方法の1つとして電導度から炭化度を推定する試みがなされてきたが、それは固形炭に限られ、粉炭の電導度測定は困難であるとされてきた。本研究では、粉炭電導度を決めるために、粉炭を異なる電導度の溶液に懸濁させて等電導度点を見つける方法を提案する。さらに、それを活性炭や杉オガクズ粉炭に適用し、その方法の有効性を示すとともに、同一材料の板炭や乾燥粉炭の測定値と比較してその適用条件を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • 粉炭は、チッソガス中で5°C/minの昇温速度、所定温度1時間保持し作成した。この粉炭10gを200mlの蒸留水に懸濁させ、NaCl溶液を用いて電導度調整をした。電導度計測は、恒温水槽中で電導度計(3kHz)を用いて行い、水中スターラーで15分攪拌後、界面沈降をさせ沈降体積が100mlの時、上澄み(溶液)電導度σと沈殿(懸濁液)電導度σ*とを測定した(図1)。図2に活性炭の相対電導度(σ*/σ)の変化を示す。相対電導度1の点が等電動度点であり、粉炭と溶液との電導度が等しくなる。 なお、図中の曲線は細孔を考慮したMaxwell式であり、実測との一致は良い。また、懸濁液の体積分率と相対電導度とはほぼ直線関係となる(図3)。
  • 杉オガクズ粉炭と活性炭電導度の炭化温度による変化を図4、図5に示す。電導度は炭化温度550~750°Cで数オーダーの変化を示すが、懸濁液の等電導度点から得た測定値は乾燥粉炭のインピーダンス測定法での値よりその変化がかなり小さい。これは、懸濁液中では粒子の表面荷電による電導度増加があり、それが低濃度溶液で顕著となるためである。しかし、安定した測定値は懸濁液中でしか得られない。一方、同じ杉材の乾燥粉炭と板炭のインピーダンス測定法による結果を図6に示す。板炭は粉炭より接触点抵抗が小さいため電導度は10倍程度高くなっている。

成果の活用面・留意点

懸濁液の電導度から粒子電導度を決定する本法では表面電導効果を除けない。本法と乾燥粉炭のインピーダンス測定とを併用することが望ましい。

具体的データ

図1 懸濁沈降を用いた粉炭電導度計測法図2 相対電導度と溶液電導度
図3 相対電導度と個体体積積分率図4 杉オガクズ粉炭電導度と炭化温度
図5 活性炭電導度と炭化温度図6 杉の粉炭と板炭の電導度比較

その他

  • 研究課題名:イオン移動監視のための電導度計測法の開発
  • 関連する中期計画大課題名:有機物循環利用のための処理技術及び自然エネルギー利用技術の開発
  • 予算区分:交付金研究、委託プロ(バイオリサイクル)
  • 研究期間:2002~2004年度
  • 研究担当者:大井節男
  • 発表論文等:1) 大井節男、多孔質粒子懸濁液の電気伝導度、コロイド及び界面化学討論会講演要旨集、32、2002.
                      2) 大井節男・松村英夫、界面動電現象とゼータ電位、土のコロイド現象(足立・岩田編)、学会出版センター、93-116、2003.