傾斜化ほ場の造成を短時間・高均平精度で実現するスパイラル工法

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要約

田面水排除時間の短縮による、転換畑作物の高品位安定生産に寄与する、ほ場傾斜化技術において、クローラートラクタ装着のレーザーレベラーを用いて傾斜化を図る場合、スパイラル工法により前・後進を繰り返す従来の工法に比べて約半分の時間で造成できる。

  • 担当:農業工学研究所・農地整備部・水田整備研究室
  • 代表連絡先:029-838-7555 Mail Address
  • 区分:技術及び行政
  • 分類:参考

背景

水田において麦・大豆・飼料作物等の本格的生産を図るためには、低コスト・省力化栽培技術体系の確立と畑作化の阻害要因である湿害や旱魃害を克服しなければならない。ほ場傾斜化は表面水の排除と旱魃時における用水供給を迅速かつ効果的に行える営農技術であるが、従来の工法は運土作業に時間を要することから、作業時間短縮技術としてスパイラル工法を開発した。

成果の内容・特徴

  • 傾斜化の一般的な方法は、傾斜を付ける方向に前進と後進を繰り返すが、後進時は運土・整地作業を行っていないため、時間ロスがある(図1)。そこで、スパイラル工法では前進作業で主に運土し、その後傾斜の仕上げ作業を行う(図2)。
  • 茨城県新利根地区(泥炭土壌)において、100m×100m区画の水平なほ場を従来工法と新工法によって傾斜1/1000のほ場とした。作業機械は100馬力のクローラートラクタと4m幅のレーザーレベラーを用いた。スパイラル工法は従来工法の約半分の時間と走行距離で造成でき、従来工法による水平ほ場の整地作業とほぼ同等であり、均平精度は4.2mmで満足できるものであった(表1)。
  • 熊本県白浜地区(重粘土壌)において、上記と同等の区画と機械を用いて傾斜1/2000のほ場を造成した。作業時間は従来工法による水平ほ場の整地よりも短い4hr/haであった(表2)。

成果の活用面・留意点

  • スパイラル工法はトラクタの走行方法を変えるだけで導入でき、営農段階における採用が可能である。水平ほ場の整地時間とほぼ同等なことから、ほ場傾斜化技術の普及に寄与する。
  • 区画の大きさや形状、土壌、含水比、使用する機械で造成に係る作業時間は変化する。
  • 傾斜化に伴って、ほ場内に切土部と盛土部が発生するため、土壌によっては施工時に水口側を鎮圧する必要がある。

具体的データ

図1 従来工法による傾斜ほ場造成及び水平ほ場整備時のトラクタ走行軌跡

その他

  • 研究課題名:水田輪作を前提とした低コストな傾斜化・再均平化技術の開発
  • 関連する中期計画大課題名:営農的ほ場面傾斜管理技術の開発
  • 予算区分:行政対応特別研究(ほ場傾斜化)
  • 研究期間:2001~2003年度
  • 研究担当者:若杉晃介、藤森新作、谷本 岳
  • 発表論文等:藤森新作、大豆の高品位安定生産のための田面傾斜化及び地下灌漑技術、今月の農業、48(3)、2004.