転換畑の用排水時間を短縮するほ場面緩傾斜化技術

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要約

ほ場面緩傾斜化と傾斜方向の上端と下端への明渠施工によって、田面排水と用水供給時間の短縮及び土壌水分と地下水位の低下が図られ、転換畑における高品位安定生産が実現可能となる

  • 担当:農業工学研究所・農地整備部・水田整備研究室
  • 代表連絡先:029-838-7555 Mail Address
  • 区分:技術及び行政
  • 分類:参考

背景

水田を転換して麦・大豆・飼料作物等の本格的な振興を図るためには、畑作化の阻害要因である湿害や旱魃害を克服しなければならない。レーザーレベラーを用いてほ場面に緩い傾斜を図ることにより田面排水や用水供給が促進することを試験により実証した。

成果の内容・特徴

  • 田面傾斜化に伴うほ場全面への用水供給時間を把握するため、農業工学研究所内の30×70mの関東ローム土壌水田(裸地状態、-60cmの有底ほ場)に湛水深で23mm/hrに相当する用水を供給した。傾斜化ほ場は水平ほ場と比較して、用水供給時間が30分以上短縮され、用水量も30%程度縮減できた(表1)。
  • 大豆栽培において開花時や干魃時は用水供給を必要とするが、供給時間が長時間化すると湿害が発生する。傾斜化ほ場において用水をほ場全面に迅速に到達させるために、用・排水側に明渠施工を行った結果、用水到達時間と用水量は明渠がない場合の1/4以下になった(図1)。
  • 上記1.と同一ほ場において、湛水深で23mmに相当する用水を供給し、各傾斜度における田面排水量を計測した。傾斜化に伴って降下浸透が減少し、田面排水量の増加と排水時間の短縮が図られた(図2)。
  • 所内の40×110mの関東ローム土壌水田において、大豆栽培時の降雨(総降雨量150mm)に伴う、傾斜ほ場(傾斜1/1000)と水平ほ場の田面排水量、地下水位、体積含水率を計測した。田面排水量は傾斜ほ場が降雨量の17.2%、水平ほ場は10.3%であった(図3)。また降雨の継続に伴い、水平ほ場では地下水位が上昇して約17時間冠水状態となったが、傾斜ほ場では冠水は起らず地下水位は速やかに低下し、土壌水分は水平ほ場に比べ1~2%低かった。

成果の活用面・留意点

  • 明渠を施工する場合、明渠のほ場側をできる限り均平化することが重要である。
  • 傾斜1/2000では盛土部の沈下や営農作業等による傾斜の消失があり、1/333では傾斜化や再均平化の際の運土量増加及び切土部で心土が露出することから、1/1000程度の傾斜が妥当と思われる。
  • 所内の排水性が非常に悪い重粘土壌水田でほ場面傾斜化を図った結果、以前まで発芽障害等を起こしていたが、透・排水性が改善され良好な収量(大豆収量は350kg/10a)が得られた。
  • 傾斜化技術は不耕起・狭畦栽培と組み合わせることでより効果を発揮することが出来る。

具体的データ

表1 用水供給試験結果

その他

  • 研究課題名:水田輪作を前提とした低コストな傾斜化・再均平化技術の開発
  • 関連する中期計画大課題名:営農的ほ場面傾斜管理技術の開発
  • 予算区分:行政対応特別研究(ほ場傾斜化)
  • 研究期間:2001~2003年度
  • 研究担当者:若杉晃介、藤森新作、谷本 岳
  • 発表論文等:若杉晃介・藤森新作・谷本 岳・瀬戸口洋一・小野寺健一、田面の緩傾斜化による排水及び潅水の迅速化技術、農土学会講演要旨集、584-585、2002.