ニューラルネットワークによるパイプライン路線多基準選定支援システム

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要約

農業用パイプラインについて、ニューラルネットワークによって、教師データから階層的な計画要因の選好度を決定して、AHP(Analytic Hierarchy Process)の数式処理に従って路線選定の多基準意思決定を支援する。

  • 担当:農業工学研究所・水工部・水路工水理研究室
  • 代表連絡先:029-838-7566 Mail Address
  • 区分:技術及び行政
  • 分類:参考

背景

近年、性能照査型設計への対応を求められている。性能設計は、設計対象の機能を広範に把握する必要があり、また、設計者以外の関係者に対して説明責任を有している。
従来の農業用パイプラインの計画方法では、機能が整理されておらず、定量化が不十分であるため、複数の機能の最適化方法や費用対性能が不明確であり、コストパフォーマンスを向上させにくく、さらに、性能を外部関係者へ説明しにくい等の諸問題があると考えられる。
これらの諸問題を解決する手法としてAHPがあり、この方法は一対比較表から選好度を求めて最適な路線案を多基準意思決定する手法である。ここでは、AHPの数学的な解釈を利用して路線選定の多基準意思決定するシステムの開発を目的とする。

成果の内容・特徴

  • システムの原理は、現時点で最良な路線から選好度をニューラルネットワークに学習させ、この選好度を新たな路線案の計画に用いて、各計画要因に対する路線案間の成績に応じた重み付けすることによって、自動的に路線を選定して意思決定を支援するというものである(図1)。
  • 農業用パイプラインに求められる機能を抽出して階層的に分類し、計画時の要因(計画要因)としてAHPのツリー構造に整理した。この計画要因は、XML(eXtensible Markup Language)にて記述できるため、データ変更をシステムに依存せずに自由に行える(図2)
  • 計画要因の選好度を、誤差逆伝播学習法によって、教師データについてニューラルネットワークに学習させて決定できる(図3)。
  • 決定した計画要因の選好度を利用して、プログラムがAHPの数式処理を用いたアルゴリズムによって、最適な路線案を決定する。
  • 計画者がマウスとキーボード等で操作し易く、他の関係者がコンピュータの実行画面を見て、計画の内容と過程が分かりやすい表示とした(図4)。
  • AHPにおける一対比較表の作成は面倒な作業であるが、本システムでは、図5-Aのリスト画面から便利な6種類の方法(B、CおよびD)を選択することができ、プログラムの対話的な案内に従って容易に行うことができる。

成果の活用面・留意点

  • 本システムは、農業用パイプラインの路線選定支援を目的に開発されたが、多基準意思決定を行うあらゆる問題に適用可能である。
  • 研究目的の用途に限り、使用許諾書の承認を条件としてコードの無償提供を行う。

具体的データ

図1 システムの原理
図3 AHPツリーにおける選好度の決定方法
図4 実行画面

その他

  • 研究課題名:高圧幹線パイプライン計画における意思決定支援システムの開発
  • 関連する中期計画大課題名:材料、構造、施設機能診断等の評価診断手法の開発
  • 予算区分:交付金研究
  • 研究期間:2001~2003年度
  • 研究担当者:田中良和、中 達雄、向井章恵、樽屋啓之
  • 発表論文等:1) 田中良和・向井章恵・樽屋啓之、ANNによる農業用パイプラインの計画要因の解析、第13回設計工学・システム部門講演会講演論文集、337-338、2003.
                      2) 田中良和、著作権登録、「ANNとAHPによる階層的計画要因の選好度決定支援ならびに路線選定支援プログラム」、2003.