監査廊と周辺地盤境界層に対する応力伝達モデル

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要約

監査廊本体コンクリートと岩盤及びコンクリートとの打ち継ぎ面の力学的特性を明らかにするために境界層供試体の直接引張試験を行いモデル化した。打ち継ぎ面の処理の違いが境界層の引張特性に与える影響を推定することが可能である。

  • 担当:農業工学研究所・造構部・構造研究室
  • 代表連絡先:029-838-7571 Mail Address
  • 区分:研究
  • 分類:参考

背景

フィルダム監査廊は、岩盤及びインバートからの拘束を受け打設初期に温度応力によるひび割れが発生し易い。この温度応力の発生には監査廊と周辺岩盤の境界層の力学的特性が大きく影響する。本研究では、実際の施工条件に基づき、境界層の条件を変化させ、引張試験を行い、その結果から境界層の力学的特性を推定するモデルを作成した。

成果の内容・特徴

  • 境界層における応力伝達特性を明らかにするために、表1に示す5種類の境界層を有する供試体を作成し、材齢1、3、7日において直接引張試験(図1)を行った。
  • 実験より得られた材齢1日おける境界層の接合応力―変位関係を図2に示す。一般のコンクリート打ち継ぎ施工法に相当するC、CMケースでは境界層の引張強度が大きいことがわかる。一方、レイタンス層がある場合(Nケース)、縁切り工法として塗料及び弾性ウレタンを塗布した場合(E、Pケース)は、境界層の引張強度は小さいことが分かる。図には示していないが、C、CM、Nケースでは境界層の引張強度は材齢とともに増加するが、E、Pケースでは材齢によりほとんど変化しなかった。
  • 境界層における応力伝達特性のモデルを図3に示す。境界層のモデル化に際して以下の仮定を設けた。(1)境界層の軟化性状はコンクリートの1/4引張軟化モデルと同じ2直線型の形状を取る、(2)境界層が引張破壊するピーク変位Wtは0.003mmである、(3)ピークから1/4応力に至る軟化域の傾きは一定勾配で材齢により変化しない。図4に実験結果(記号)とモデルから求めた値(実線)の比較を示す。両者は良く一致した。
  • 以上から、監査廊周辺の岩盤による境界面に垂直な方向の拘束は、境界層の処理状態により大きく影響を受けることが明らかになった。岩盤への塗料及び弾性エポキシ材料の塗布は岩盤拘束の低減に大きな効果を持つと考えられる。

成果の活用面・留意点

本研究の結果はコールドジョイントの引張特性の予測にも応用が可能である。ただし、本実験での境界層の凹凸は2mm程度である。凹凸が2mm以上の境界層に対して本推定式を適用する場合は別途考慮が必要となる。塗料および弾性エポキシの実験結果については、製品ごとにコンクリートとの付着性能が異なるため参考値として活用を望む。

具体的データ

図1 直接引張試験

その他

  • 研究課題名:外部拘束を考慮した監査廊の応力・変形解析手法の開発
  • 関連する中期計画大課題名:材料、構造、施設機能等の評価診断手法の開発
  • 予算区分:交付金研究
  • 研究期間:2001~2003年度
  • 研究担当者:浅野勇、向後雄二、林田洋一
  • 発表論文等:1) 浅野 勇・向後 雄二・林田 洋一、簡易断熱試験装置によるコンクリートの断熱温度上昇曲線の推定、農業土木学会論文集、218、149-155、2003.
                      2) 浅野 勇・向後 雄二・林田 洋一、マスコンクリートのクーリングパイプ周辺の温度場に関する研究、コンクリート工学年次論文集、24、975-980、2002.