透過電磁波による地盤中導電率鉛直プロファイルの推定手法
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要約
測定対象のスケールよりも小さい半波長の電磁波を用いれば、透過電磁波によって、地盤中の導電率分布の連続的な鉛直プロファイルを、十分な精度で推定できる。
- 担当:農業工学研究所・造構部・土木地質研究室
- 代表連絡先:029-838-7577

- 区分:技術及び行政
- 分類:参考
背景
地盤中の汚染物質やトレーサの分布や移動状況をモニタリングする手法として透過電磁波を用いる方法を提案した。その適用性の検討のために、地盤の導電率に影響を与えるような汚染物質あるいはトレーサが層状にかつ拡散の影響を受け分布している状況を想定して、図1のような導電率鉛直プロファイルを有するモデル地盤を設定した。導電率の分布は誤差関数で表現しそれを特徴づけるパラメータδ(誤差関数の分散に相当)、透過電磁波による計測の分解能を特徴づける波長λ(伝搬速度/中心周波数)の組み合わせを変えて、電磁波の伝搬過程における推定精度を数値実験によって検討した。
成果の内容・特徴
- Maxwell方程式の時間領域の差分法に基づく電磁界シミュレーションによって図1のようなモデル地盤中での電磁波の伝播過程を再現した(図2)。導電率が高い領域で電磁波強度が減衰していることがわかる。
- 図1の送信点受信点を図の上下(Z方向)に移動させ導電率プロファイルを推定した。電磁波の波長が短い場合にはモデルの分布を精度よく推定できた(図3参照、δ=0.5mで波長λ=0.5m~4mの場合)。
- δが0.25m,0.5m,1.0m,1.5m,2.0mの場合、波長λが0.5m,0.66m,1.0m,2.0m,4.0mの場合すべての組み合わせについて系統的な検討を行った結果、計測対象の特徴的なスケールδより測定に用いる電磁波の半波長(λ/2)が短ければ、十分な精度で導電率分布を推定することができることが分かった。
- 測定対象のスケールに対して十分小さい波長を用いれば伝播過程における誤差は十分小さいので、地盤中の物質移動における移流速度や分散性の評価にも透過電磁波によるモニタリング手法は有効と考えられる。
成果の活用面・留意点
現地適用の際には地質構造に起因する電磁波伝播速度等の不均一性や、実際に用いるアンテナの放射受信特性について考慮する必要がある。溶存物質の濃度等土の物理化学性と導電率等電磁気特性の関係については、室内実験等で系統的に明らかにする必要がある。
なお、周波数が高い(波長が短い)ほど電磁波は急速に減衰するので、極端に短い波長の電磁波は地盤の測定には使用できない。
具体的データ

図1 シミュレーションに用いたモデル地盤中の導電率分布の設定条件


その他
- 研究課題名:透過電磁波による地盤環境測定能の評価
- 関連する中期計画大課題名:水・土地等資源のモニタリング技術及び環境影響評価指標化手法の開発
- 予算区分:交付金研究
- 研究期間:2001~2003年度
- 研究担当者:黒田清一郎、中里裕臣、奥山武彦、北陸農政局、東北農政局、九州農政局、沖縄総合事務局、三菱マテリアル資源開発株式会社、ドリコ株式会社
- 発表論文等:1) 特許出願中「地下汚染物質探査方法および地下汚染分布監視方法」(特願2002-304310、2002.10.18)
2) 黒田清一郎・中里裕臣・奥山武彦、透過電磁波による地盤中導電率分布の推定精度、農業工学研究所技報、202、205-214、2004.