サトウキビ栽培におけるメタン発酵消化液や廃棄系バイオマス炭化物の施用

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要約

メタン発酵消化液と廃棄物系バイオマス炭化物の農地投入によって、島尻マージ土壌の乾燥密度を下げ、保水性が向上する。これにより、サトウキビの根張りがよくなり、根圏環境を改善する。また、炭化物を土壌に添加することで、浸透流出した硝酸態窒素濃度を低減し、環境負荷を軽減することが期待される。

  • キーワード:バイオマス炭化物、メタン発酵消化液、農地還元、島尻マージ土壌、硝酸態窒素
  • 担当:農工研・農地・水資源部・農地工学研究室
  • 連絡先:電話029-838-7552、電子メールyshinogi@affrc.go.jp
  • 区分:共通基盤・バイオマス、農村工学
  • 分類:技術および行政 参考

背景・ねらい

メタン発酵消化液と廃棄物系バイオマスであるバガス(サトウキビ搾りかす)由来の炭化物を、保水性に乏しい島尻マージ土壌に投入することにより、土壌の理化学性とサトウキビの根圏環境の改善効果について検討した。また、保水機能を有する炭化物の農地投入によって、地下水に到達する硝酸態窒素濃度の低減効果を検討した。

成果の内容・特徴

室内ライシメーター(2m×2m)にサトウキビを栽培し、堆肥、バガス炭、メタン発酵消化液(以降消化液)などを施用し(施用条件は表1を参照)、1生育期間で調査を行った。なお、散水はパイプを使って各ライシメーターに同様に行った。その結果、以下のことが解明された。

  • 各試験区におけるサトウキビ栽培初期の土壌体積含水率(%)を図1に示した。堆肥のみ添加区と化学肥料区の土壌水分においては顕著な差が見られなかったが、バガス炭添加区の土壌水分は炭化物無添加区を大きく上回った。
  • メタン発酵消化液や堆肥などの有機物とバガス炭を添加することで、土壌の乾燥密度が下がった(図2)。その結果、サトウキビの根張が向上し、根量が一部増加した(図3)。特に表層の根量が増加した。バガス炭の添加によって土壌の保水性が向上し、サトウキビの根圏環境が改善され、収量および品質の向上に繋がると期待される。
  • 消化液や堆肥などの有機物とバガス炭を土壌に添加することで、浸透流出水量は2~6%削減した。さらに、炭化物による吸着や脱窒の促進などによって浸透流出水中の硝酸態窒素濃度が軽減した。実験では33~57%の積算硝酸態窒素量が削減でき、特に肥料施用直後においてほかの区よりも顕著に小さかった(図4)。

成果の活用面・留意点

宮古島では、飲料水を含む生活および農業用水全般を地下水に頼っており、硝酸態窒素による地下水汚染は深刻な問題である。バガス炭化物を活用できれば、有機肥料の施用の拡大が期待され、サトウキビの生産向上と地下水汚染の低減の両立が期待できる。
ただし、消化液を農地還元する場合、消化液由来の硫酸イオンの流出が懸念される。

具体的データ

表1 有機性肥料とバガス炭の主要元素含有量図1 生育前期における各試験区の土壌含水率

図2 試験前後の乾燥密度変化図3 根重(1m2*0.3m 深さ)

図4 各試験区における浸透流出水量および硝酸態窒素の浸透流出量の変化

その他

  • 研究中課題名:持続的利用可能な高生産性土地基盤の整備技術の開発
  • 研究課題名:宮古島におけるバイオマス循環システムの構築及び実証に関する研究
  • 課題ID:412-b-00-002-00-I-06-5201
  • 予算区分:委託プロ(農林水産バイオリサイクル研究)
  • 研究期間:2004~2006年度
  • 研究担当者:凌 祥之、陳 嫣
  • 発表論文等:凌 祥之,陳 嫣(2006),バイオマス変換物の農地還元が作物生育に与える影響,
                      農業土木学会大会講演会要旨集,pp.752~753