ゴム弾性を活用した農業用水路の目地補修工法

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要約

目地材料に遮水材料として実績のあるEPDMゴムを採用した目地補修工法を開発した。ゴムの劣化要因となる引張応力が目地材の露出部分に生じない形状とすることで、農業用水路の目地部の伸縮に追従可能で、かつ、長期耐久性を有する。

  • キーワード:農業用水路、目地、補修工法、ゴム、EPDM
  • 担当:農工研・施設資源部・水利施設機能研究室
  • 連絡先:電話029-838-7573、電子メールtokasiki@affrc.go.jp
  • 区分:農村工学
  • 分類:技術及び行政 普及

背景・ねらい

更新事業の対象となっている農業用コンクリート水路においては、コンクリート躯体自体には機能低下が無い一方、目地材の劣化や欠損による漏水が発生し、水路の水利機能が著しく損なわれている事例が多い。その補修方法として、目地部を普通セメントモルタルで埋める簡易な方法から、新材料を用いて被覆する方法、そして、目地近傍の躯体を取り壊し、止水板の再設置、躯体の部分再打設といった本格的な方法、までが採用されている。しかし、水路目地部の伸縮に補修目地材が追従できずに再損傷が生じる事例もある。
本工法は、ゴム弾性の活用により、目地部伸縮への追従性、高止水性、高耐久性を確保し、かつ、躯体の取り壊しが必要最小限で済むコンクリート水路の目地補修工法である。

成果の内容・特徴

  • 本工法は、はつった既存目地部に、EPDM(Ethylene Propylene Diene Monomer)ゴムを用いた目地材にエポキシ樹脂接着剤を塗布して圧縮状態で挿入し、固定する工法であり、ゴム弾性により目地部伸縮への追従を可能とした工法である(図1、2)。
  • 目地材の断面形状は、50mmで挿入し、接着剤を硬化させた条件下で圧縮側に7mm変形させた場合においても紫外線およびオゾンに曝される水路表面側に劣化要因となる引張応力が生じない形状となるようFEM解析により最適化した(図3)。
  • 水路表面および背面から水圧が作用した場合の止水性に関する試験では、水深10mに相当する水圧0.10MPaを表面側および背面側から作用させた場合のいずれにおいても、漏水が無く、止水性が良好であることが確認された。
  • 水路表面および背面から荷重が作用した場合の脱落への抵抗性に関する試験では、目地幅44mmの条件下で、引き抜き抵抗性2.51MPa、押し抜き抵抗性1.61MPa、また、目地幅54mmの条件下では、各々1.11MPaおよび0.74MPaを示し、設定目地幅内(44~54mm)において脱落への抵抗性は確保されていると判断された。
  • 目地材料であるEPDMゴムの屋外曝露10年における耐候性試験では、保持率において引張強さ98%、伸び74%を示し、伸びにおいて若干の劣化傾向を示した。一方、促進耐候性試験(キセノンアーク灯式耐候性試験、3,000時間)では、引張強さ98%、伸び101%と変化は見られなかった。
  • 本工法適用地における日および年間の目地幅変動(図4)にもかかわらず、目地材に変状が発生していないことから、目地部伸縮への追従性が確認された。

成果の活用面・留意点

  • 本工法で用いる標準目地材(幅54mm)は、10m程度のスパンを有する水路を想定して設計されており、それ以上のスパン長の水路に適用する場合には、予め適用水路における目地の伸縮状況について検討しておく必要がある。
  • 水路側壁目地と底版目地のずれが大きく、50mmのはつり幅に収まらない状況では、側壁目地と底版目地の分離や底版目地部の打換えなどが必要となる。

具体的データ

図1 目地補修工法の概要図図2 目地補修工法の断面図

図3 目地材の応力分布図図4 目地部伸縮の日および年変動

その他

  • 研究中課題名:農業水利施設の機能診断・維持管理及び更新技術の開発
  • 実施課題名:既設水路躯体を利用した農業用水路機能回復技術の開発
  • 課題ID:412-a-00-005-00-I-06-4501
  • 予算区分:交付金プロ(施設機能)
  • 研究期間:2004~2006年度
  • 研究担当者:渡嘉敷勝、増川晋、中矢哲郎、森充広、長束勇、石村英明、江口和雄・高橋晃・
                      安東祐樹(共同研究・ショーボンド建設(株))、河部一成・江坂昌己・中川拓之・
                      近藤和夫(共同研究・化成工業(株))
  • 発表論文等:
    1)石神ら(2006) 、ゴム弾性を活用した水路目地補修工法の止水性と耐久性農土論集245、pp.101-107
    2)特許出願、コンクリート構造物における漏水防止用シール材及び漏水防止用シール材を使用した
      漏水防止方法、2004-098699