ため池底泥土を用いたため池改修法

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要約

老朽ため池は築造年代が古く、堤体破損や漏水の補修など早急な改修が必要なものが多い。ため池に堆積した底泥土を一旦固化させた後に解砕してから処理し、堤体改修の築堤土として有効利用する改修工法により、コスト低減が可能になる。

  • キーワード:老朽化ため池、底泥土、改修工法
  • 担当:農工研・企画管理部・防災研究調整役
  • 連絡先:電話029-838-8193、電子メールstani@affrc.go.jp
  • 区分:農村工学
  • 分類:技術及び行政・普及

背景・ねらい

老朽ため池は築造年代が古く、堤体破損や漏水の補修など早急な改修が必要なものも多い。ため池堤体の改修には、強度や遮水性に優れた築堤土が必要であるが、最近ではこの築堤土の入手が困難になってきており、改修や補強が計画どおりに進まない事例が増えてきている。また、ため池には底泥土が厚く堆積していて、貯水容量の減少や水質の悪化など、ため池機能の阻害や低下の原因になっている。本研究はそのままでは築堤材として不適な底泥土を固化処理し、堤体改修の築堤土として有効利用する改修工法を開発する。

成果の内容・特徴

  • 底泥土にセメントなどの固化材を加えて固化させるだけの改良土は既設のため池堤体との密着性が悪く使用できなかった。本研究では、一旦固化させた底泥土を解砕してから通常土と同様に転圧して築堤すると、再固化時の応力~ひずみ特性が通常土に近い特性になる性質を利用してため池の築堤土に使用できるようにした(図-1は工法の概要)。
  • 底泥土に加える固化材量の調節により所要の強度の築堤土を人工的に製造できるので、急勾配法面での堤体改修が可能であり、貯水容量の減少や土工量の増加を最小限に抑えられる。また、土砂の搬出と搬入に伴うダンプ運搬がなくなり、工事中の騒音、排気ガス、渋滞などの近隣環境への影響がなく、かつ経済的である。
  • 底泥土を土質改良する時の、強度や遮水性に及ぼす固化材料、底泥土の固化前含水比、解砕・転圧までの固化日数が強度や遮水性に及ぼす影響を系統的に調べ、設計・施工のための基礎資料を取りまとめた。
  • 底泥土を固化材により土質改良して所要の強度と遮水性をもつ築堤土を製造するための設計法、施工システム、及び施工管理法を確立し、設計・施工マニュアルとしてまとめた。
  • ため池の設計法について、堤高や堆積土の粒度に応じて遮水性の高いものと強度の大きい材料を使い分けて、①水平ゾーニング方式、②傾斜ゾーニング方式(図-2)を提案し、それぞれの設計法をとりまとめた。

成果の活用面・留意点

  • 本工法はため池の遮水性の向上だけでなく、耐震補強工法としても効果的であり、大規模地震動が想定される老朽化ため池の耐震補強にも有効な方法である。
  • 底泥土の性質により設計断面、施工法が異なってくるため、事前に底泥土の詳細調査を行ってから設計を行うことが重要である。

具体的データ

図-1 底泥土を利用した破砕・転圧盛土工法の概念

図-2 堤高の高いため池の場合の設計概念(堤高20m程度で傾斜遮水ゾーニング方式の例)

その他

  • 研究中課題名:農業水利施設の機能診断・維持管理技術及び更新技術の開発
  • 実施課題名:ため池底泥土の固化処理及び再利用技術の開発
  • 課題ID:412-a-00-009-00-1-06-4902
  • 予算区分:委託プロジェクト(農林水産バイオリサイクル研究)
  • 研究期間:2002~2006年度
  • 研究担当者:谷 茂
  • 発表論文等:
    1)谷茂、福島伸二(2006)、固化処理土による老朽ため池堤体改修の新設計法の提案、農業土木学会論文集、
       243、pp.25-32
    2) 谷茂、福島伸二、北島明、酒巻克之(2006)、築堤土の製造及びフィルダムの堤体改修方法、特願20006-070131
    3) 谷茂、福島伸二、北島明、酒巻克之、石黒和男(2003)、平成15年度地盤工学会技術開発賞「ため池底泥土等を
       利用した砕・転圧盛土工法」