土嚢を用いた高耐久性ため池工法
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要約
側面に連結用のヒレを設けた特殊な大型土嚢を積層することによって施工したため池堤体は、土嚢積層部分が大きな補強効果を発揮するために高い耐震性を発揮する。大きな地震動を受けた場合でも土嚢の積層部分とヒレが堤体を一体化して高い安全性を確保できる。
- キーワード:ため池、土嚢、耐震性
- 担当:農工研・施設資源部・土質研究室
- 連絡先:電話029-838-7574、電子メールymohri@affrc.go.jp
- 区分:農村工学
- 分類:技術及び行政 普及
背景・ねらい
農業用ため池は、地域の貴重な水資源となっておりその安全性の確保と維持管理は地域社会の防災機能を向上する上で極めて重要な課題である。一般的には老朽化の進んだため池堤体の安全性を向上するためには、全面的な改修・改築が行われるが、老朽度や機能低下の種類によっては部分的な改修によって耐久性を回復できる場合がある。本研究では、ため池堤体を特殊な大型土嚢を用いて簡便にその耐久性を向上する技術を開発するもので、大型の震動実験によってその安全性を確認した。
成果の内容・特徴
- 土嚢積層体の震動実験を実施し、高耐久性ため池堤体の地震時挙動を確認した。その結果、破壊時のすべり面は堤体の内部の深い位置に発生しており、このことが安全性を飛躍的に向上している。また、土嚢を傾斜させて積層することによって、土嚢間でのすべりを抑制することができ、耐震性向上に大きな効果を発揮していることが明らかになった。兵庫県南部地震と同規模の地震動に対しても土嚢を積層したため池堤体の変形は、数cm以下で極めて安全な状態が維持されていることが明らかとなった。大きな破壊は、1200gal以上の地震動によって発生した。
- 特殊な大型土嚢を用いて堤高約4mの高耐久性ため池を兵庫県加古川市の「峠池」に構築し、2006年10月までの挙動観測を実施した。その結果、夏場の紫外線が直接当たることによる劣化は、当所の予想以下に留まり健全性を維持できていることが確認できた。また、池内の地盤が軟弱な場合にも特別な地盤改良を設けることなく、大型土嚢の設置によって不同沈下を低減できることが明らかとなった。本施工によって、具体的な施工マニュアルを策定した。
- 土嚢を積層して堤体を構築する場合、堤体上部土嚢に直接中詰め材を投入して転圧することは施工効率の上で最も効果的であるが、天端幅が狭いなどの小規模ため池では、逆に効率が悪いことが明らかとなった。この場合、堤外で土嚢を作成し転圧後に堤体上部に運搬する必要がある。ため池規模に応じて土嚢作成機械の小型化が必要であることが分かった。
成果の活用面・留意点
- 堤高が5~6m程度の中規模のため池堤体の耐震性を向上する技術として有効である。特に老朽化の進んだため池堤体の下流法面の部分補修に利用することも可能で、部分的な補強技術としての利用価値も高い。
- 土嚢の作成と積層方法をため池の規模に応じて効率化を図ることが今後の課題である。
具体的データ




その他
- 研究中課題名:農林水産業施設廃棄物のリサイクル技術の開発
- 実施課題名:コンクリート廃材処理及び環境調和型利用技術の開発
- 課題ID:412-c-00-007-00-I-06-6702
- 予算区分:委託プロ(バイオリサイクル)
- 研究期間:2004~2006年度
- 研究担当者:毛利栄征、松島健一、堀俊和
- 発表論文等:
1)Arangelovski, G., Mohri, Y., Matsushima, K. and Yamazaki, S. (2006): Comparison of analytical and experimental
residual displacement of an earth dam improved with geotextile soil bag system.
Proc.41th Annual conference, JGS 41,pp.689-690
2)Aqil, U.,Matsushima, K., Yamazaki, S., Mohri, Y.,Tatsuoka,F. (2006): Failure mechanism of geosynthetic soil bags
in lateral shearing . Proc. 41th Annual conference, JGS (in Japanese) 41,pp.687-688