農業体験学習における教育的効果の発現の特徴と効果的な取り組み方法

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要約

農業体験学習における宿泊,農家の協力等の取り組み方によって,教育的効果は異なる。教育的効果の発現の特徴を踏まえて,農業体験学習の担当者が児童と自然・社会生活との関わりを深める等,目的に応じた学習のより効果的な取り組み方法を提案できる。

  • キーワード:農業体験学習,小学校,教育的効果,アンケート調査,分散分析
  • 担当:農工研・農村総合研究部・都市農村交流研究チーム
  • 連絡先:電話029-838-7559,電子メールiyamada@affrc.go.jp
  • 区分:農村工学
  • 分類:技術及び行政 参考

背景・ねらい

農業・農村が持つ教育的機能への期待が高まる中で,全国各地の小学校で農業体験学習が行われており,ねらいとする多様な教育的効果に対応した取り組みが求められている。
そこで本研究では,どのような取り組み方をすればどのような教育的効果が得られるのかという,農業体験学習の取り組み方による教育的効果の発現の特徴を明らかにし,自然や生物に対する理解を深めるなど,目的に応じたより効果的な体験方法を検討する際に有用な情報を提供する。

成果の内容・特徴

全国学校総覧の公立小学校から無作為抽出した540校と,東京都内の小学校155校の教員を対象に,2004年7月~8月に郵送によるアンケート調査を行った(配布数695,有効回答数210)。

  • 分散分析の結果,農業体験学習の取り組み方によって教育的効果が異なっており,中でも「宿泊」「農家の協力」「環境との接触」の3つと教育的効果との関連性が顕著であることが明らかとなった(表)。
  • 宿泊が無いよりも有る方が精神的側面の効果が高い(表)。学校内や学校近辺より,宿泊を伴う農業体験学習をする方が,子どもの情緒安定等の効果があると考えられる。
  • 農家の協力が無いよりも農家の協力が有る方が,社会生活に関わる側面の効果が高い(表)。農業体験学習での農家とのコミュニケーションを通して,子どもが農業や地域に対する興味や知識を深めていると考えられる。
  • 環境との接触が無いよりも有る方が自然とのつながりの側面の効果が高い(表)。農業体験学習の中で,農作業だけでなく,虫を捕まえたり川遊びをしたりといった行動を伴うことによって,子どもが自然とのつながりを体感していると考えられる。
  • 以上のような教育的効果の発現の特徴を踏まえて,期待する教育的効果に応じた農業体験の取り組み方を考える上で役立つ基礎情報を作成した(表)。これにより,例えば,担当者が「自然や生き物への興味・関心」の効果を期待する場合には,農業体験学習の回数を3回以上に多く設け,家族の参加も得て,農作業だけでなく虫捕りや川遊びの体験も組み込むことが効果的であり(表側の*1),あるいは,「地域への興味・関心」の効果を最も期待する場合には,学校から1km内の近辺の農地で,1回あたりの時間を2時間より長くとって,地域の協力や農家の協力を得ながら実施するのが効果的であるといった提案ができる(表側の*2)。

成果の活用面・留意点

  • 本成果により,普及センター,自治体,学校,土地改良区,JA等の担当者が,目的とする効果に応じた農業体験学習の取り組み方を考える上で活用できる。
  • ただし,子どもを対象とするアンケート調査や現地調査等により,農業体験学習の取り組み方と教育的効果との関連性をさらに検証していくこととしている。

具体的データ

表 農業体験学習の取り組みを支援するための基礎情報

その他

  • 研究中課題名:農村地域の活力向上のための地域マネジメント手法の開発
  • 実施課題名:農業・農村体験の取り組みによる教育的効果の解明
  • 課題ID:413-a-00-004-00-I-06-7405
  • 予算区分:交付金プロ(ソフト機能)
  • 研究期間:2004~2006年度
  • 研究担当者:山田伊澄
  • 発表論文等:
    1)山田伊澄(2006) ,農業体験学習の取り組み方による教育的効果の発現特性と農業体験プログラム設計ツール,農工研技報204,pp.23-31
    2)山田伊澄(2006) ,農業体験学習の取り組み方と教育的効果の関連性に関する分析,農林業問題研究162,pp.101-104
    3)山田伊澄(2006) ,農業体験学習の取り組み方と教育的効果の関連性―小学校教員を対象としたアンケート結果をもとに―,農業経営通信229,pp.30-33
    4)山田伊澄(2006) ,教育的効果の向上を目指した農業体験プログラム設計,むらづくりテクダス2