土質の違いによる一面せん断試験の周面摩擦特性と垂直応力の補正法

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要約

一面せん断試験により土のせん断強度を測定する場合の垂直応力の補正法についての提案である。加圧板側と反力板側の垂直応力の値と試料の土質によって周面摩擦特性を分類でき、せん断面の垂直応力を補正することができる。

  • キーワード:一面せん断試験、周面摩擦、カオリン、三隅砂
  • 担当:農工研・農村総合研究部・広域防災研究チーム、農地・水資源部長
  • 連絡先:電話029-838-7547
  • 区分:農村工学
  • 分類:技術及び行政・参考

背景・ねらい

地すべり対策工の設計において、地盤のせん断強度は最も基本的な定数の一つである。この測定には三軸圧縮試験機や一面せん断試験 機、リング式せん断試験機等が用いられてきた。このうち一面せん断試験機は、比較的少ない試料で最大強度から残留強度までの測定を行うことができ、また試 験機と試験法が比較的簡単であるため多くの測定に用いられてきており、現在では垂直荷重計を反力板側に設置した一面せん断試験機(反力型)が地盤工学会の 基準になっている。しかしながら、この試験機は土試料の土質と密度、固結の程度等によって供試体とせん断箱内面との摩擦(周面摩擦)の向きが変化し、例え ば正規圧密粘土についての現行基準による定圧試験ではせん断強度が過大に求まるなど、垂直応力の補正法に問題があった。このため土質の違いによる反力型一 面せん断試験機の周面摩擦特性を明らかにし、垂直応力の補正法を提案する。

成果の内容・特徴

  • 反力型一面せん断試験機で乾燥砂のような粒状の供試体をせん断する場合は、ダイラタンシーの正負にかかわらず反力板側せん断箱の周面摩擦はほとんど無く、せん断面の垂直応力は反力板側荷重計で計測された値に近い(図1、2)。
  • 正規圧密粘土の定圧及び定体積試験で、反力板側垂直応力が加圧板側垂直応力よりも小さい状態では、供試体層厚の大小にかかわらず加圧板側及び反力板側せん断箱に一定の周面摩擦が存在する(図3)。この場合、せん断面の垂直応力は加圧板側垂直応力と反力板側荷重計で計測された応力の平均値に近い(図3と4を比較)。
  • 反力板側垂直応力が加圧板側垂直応力よりも大きい状態では、土質によらず、せん断面の垂直応力は反力板側荷重計で計測された 値に近い。この状態は、供試体がせん断時に膨張する場合に発生しやすく、また正規圧密粘土でも、定体積試験で上下せん断箱の間隙が小さい場合に発生するこ とがある。
  • 中間土では、試料の粒度分布や固結の程度等により、せん断面の垂直応力は加圧板側と反力板側の垂直応力の平均値、又は反力板側垂直応力のいずれかに近い値となる。この場合、定圧と定体積試験を併用すると判別できることが多い。
  • 周面摩擦を補正したせん断面の垂直応力は、加圧板側、反力板側の垂直応力の状態、試料の土質により、表1のように分類される。この表に従って試験結果を整理することにより、周面摩擦が補正された精度の高いせん断強度が得られる。

成果の活用面・留意点

  • ユーザーは地すべり対策に関係する国・県等の事業所、独法の研究所、大学、建設関連企業等である。この分類表は対策工の安全性や経済性の向上に寄与する。
  • 今後、三軸圧縮試験との比較も行いつつ、今回得られた表1による分類の妥当性を種々の土試料について検証することが望ましい。

具体的データ

図1緩詰め三隅砂(乾燥状態)における供試体層厚(図2参照)とせん断抵抗角の関係

図2 一面せん断試験の加圧板側・反力板側供試体層厚と加圧板側垂直応力及びせん断応力

図3 正規圧密カオリン粘土における供試体層厚とせん断抵抗角の関係

図4 正規圧密カオリン粘土の定体積試験と定圧試験の比較。

表1垂直応力の状態、試料とせん断面の垂直応力

その他

  • 研究課題名:地域防災力強化のための農業用施設等の災害予防と減災技術の開発
  • 実施課題名:地すべり土の剪断試験法の改良と反力型一面剪断試験機の特性解明
  • 課題ID:412-c-00-008-00-I-06-6805
  • 予算区分:交付金研究
  • 研究期間:2006~2007年度
  • 研究担当者:古谷保、川本治、井上敬資、中里裕臣、山田康晴
  • 発表論文等:
  • 1) 古谷保ら(2007)、カオリン粘土の一面せん断試験における周面摩擦特性と限界強度、農工研技報206号:25-41

    2) 古谷保ら(2008)、定圧一面せん断試験における供試体層厚と周面摩擦の関係、農工研技報207号:81-91

    3) 古谷保ら(2007)、4種類の制御方法による正規圧密カオリン粘土の定体積一面せん断試験、平成19年度農土学会大会講演会講演要旨:892-893