水田のかんがい水位を自動管理する低コストな水位管理器

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要約

水稲の通常期における田面水位及び乾田直播の発芽・苗立ち時、転換畑の地下灌漑時の地下水位などをあらかじめ設定した水位に自動調節する水位管理器。簡単かつ低コストで水管理の省力化・適正化を実現できる。

  • キーワード:水管理、水位管理器、田畑輪換、地下灌漑、省力化
  • 担当:農工研・農村総合研究部・水田汎用化システム研究チーム
  • 連絡先:電話029-838-7554
  • 区分:農村工学
  • 分類:技術及び行政 普及

背景・ねらい

農業の担い手への農地集積による経営規模の拡大に伴い、水稲栽培時の水管理労力の削減と確実な水位管理が課題の一つとなってい る。また、転作時には、地下水位制御による大豆や麦等の作物の高品位・安定多収が求められている。そこで、用水供給時の水位の適正化とかけ流し防止、水管 理労力削減を目的に構造が簡単で低コストな水位管理器を開発し、水管理の効率化に資する。

成果の内容・特徴

  • 水稲栽培における最大取水時の給水栓は全開であることから自動制御を行わず、水稲栽培時の普通期や畑作の地下灌漑時にのみ対応する。水圧や動力に頼らず水位変化に伴うフロートの上下動のみで弁が開閉する単純な構造で低コスト化を実現する(図1・2)。
  • 水位の設定は、上部振れ止めにある固定ネジを緩めて塩ビ管(VU200)内の取付位置(高さ)を調節することにより行う。
  • 吐出流量は50a区画の水田に補給した場合、日単位用水量で17.3~20.7mm、30a区画では28.8~34.6mmとなり、通常期の減水深に対応できる。
  • 給水管の口径は用水の圧力によって、低圧タイプと高圧タイプに分けている。各タイプの水理特性は、用水の水頭と吐出量及び止水能力を実験装置で確認した(図3)。
    (1)低圧タイプ
    給水管の口径25mm、用水バルブとの接続ホースの口径は30mmで、自然圧パイプラインや開水路からの取水を対象としている。実験の結果から、適用範囲の水頭は自然圧パイプラインの送水最低水頭としている0.2mから止水限界の6.0mとした。
    (2)高圧タイプ
    給水管の口径16mm、接続ホース口径20mmで、揚水機場から高圧力水が送水されるパイプライン地区を対象としており、実験による適用水頭は1.5m~20mであるが、吐出量を最低1.0l/secとした場合には、4.0m以上における適用とする。

成果の活用面・留意点

  • 水位管理器は、ほ場整備事業における設置以外に、個人等が既存の用水供給口へ取り付けることも可能である。
  • 自然圧で作動することから、開水路地区においても利用可能であり、水田全般の水管理の自動化に適用できる。

具体的データ

図1 水位管理器の構造と設置状況

図2 水位管理器の作動状況

図3 水位管理器の水頭別の吐出量

その他

  • 研究課題名:田畑輪作に対応した生産基盤整備技術の開発
  • 実施課題名:地下水位調節システム等による転換畑の湿害防止効果の検証
  • 課題ID:211-l-00-001-00-I-07-1102
  • 予算区分:交付金研究、平成19年度重点事項研究強化費
  • 研究期間:2006~2007年度
  • 研究担当者:藤森新作、若杉晃介、小倉 力
  • 発表論文等:1)藤森新作、小野寺恒雄((株)パディ研究所)(2006)「自動給水栓」特開2006-314249