衛星データおよび10mメッシュ土地利用図を用いた土地利用変化の把握手法

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要約

既存の10mメッシュ土地利用図を基本に、衛星データを用いた土地被覆図を重ね合わせた解析を行うことにより、土地利用の変化部分を精度よく抽出できる。また、土地利用図ではわからない植生の変化や耕作放棄地等が抽出できる。

  • キーワード:衛星データ、土地被覆分類図、10mメッシュ土地利用
  • 担当:農工研・農地・水資源部・土地資源研究室
  • 連絡先:電話029-838-7670
  • 区分:農村工学
  • 分類:技術及び行政・参考

背景・ねらい

大都市を中心として国土地理院から10mメッシュ土地利用図(ラスターデータ)が作成・販売されているが、1997年版を最後に 更新されていない。また、「その他の公共公益施設用地」などのような項目の植生や建物の状況はわからない。一方で衛星データは周期的に地球を観測してお り、過去から最新のデータまで取得可能である。特に、国産のALOS衛星が打ち上げられ、10m解像度のAVNIL-2データが安価に入手可能である。
そこで、2005年8月に開通したつくばエクスプレス(以下「TX」)に伴い土地利用が変化しているつくば市周辺を例に、衛星データと既存の土地利用図を組み合わせることによって土地被覆や土地利用の変化を迅速に把握する。

成果の内容・特徴

  • 解析にはALOS/AVNIR-2データ(2006年5月21日観測)、Landsat/ETM+データ(2001年6月4日観測)、10mメッシュ土地利用図(1994年版)を用い、図2の 手順で解析する。幾何補正済みの衛星データを40項目に教師なし分類し、土地利用図やオルソ画像を参照して9項目の土地被覆項目に分類する。1994年の メッシュ土地利用図を基準とし、2001年と2006年衛星データの土地被覆項目で、森林・田・畑等から変化した部分を抽出する。
  • 上記の処理により、次に示す土地利用の変化部分が精度よく抽出できる(図3)。 1水田の耕作放棄地(放棄されて植物で覆われた状態)が抽出でき、TX沿線の谷津田や排水条件の悪い水田でみられる。2駅周辺では土地利用が大きく変化し (森林や畑が裸地や市街地に変化)、大規模な住宅団地開発も抽出できる。3圏央道の建設地で水田が消失した部分、空地や造成中地が市街地(建築物)に変化 した部分を抽出できる。
  • これらの分類結果を現地調査や空中写真で確認したところ、いずれも正しく抽出できている。30m解像度の Landsat/ETM+データ、10m解像度のALOS/AVNIR-2データとも土地被覆分類の段階では誤分類が見られたが、10mメッシュ土地利用 図を重ね合わせることにより誤差をほぼ消去できる。また、土地利用図からは得られない公共公益地内の植生変化(森林の伐採等)を衛星データの併用によって 抽出可能である。

成果の活用面・留意点

現在のところ、10mメッシュ土地利用図は大都市圏地区に限定されるが(首都圏、中部圏、近畿圏)、今後このようなデータが整備されれば全国に適用可能である。耕作放棄地の抽出には、衛星データの観測時期、転換畑で類似植生の有無、等を確認する必要がある。
土地利用の変化でも、抽出できない土地利用項目(低層住宅、工業用地等)もある。
これらの解析には、パソコンと一般的な画像解析ソフトがあれば可能である。

具体的データ

図1 用いた衛星データと土地利用データ(研究学園駅付近)

 

図2 解析の流れ

 

図3 土地利用が変化した部分の抽出結果

 

その他

  • 研究課題名:持続的利用可能な高生産性土地基盤の整備技術の開発
  • 実施課題名:利根川流域を対象とした広域の水入れ時期推定手法の開発
  • 課題ID:412-b-00-004-00-I-07-5402
  • 予算区分:交付金研究
  • 研究期間:2007~2009年度
  • 研究担当者:島武男、小川茂男、吉迫宏
  • 発表論文等:小川茂男(2007)ALOS等を用いたつくば周辺の土地被覆・土地利用変化の把握、写真測量とリモートセンシング、46(4):26-31