草生帯の赤土流出軽減効果評価のための土砂輸送モデル

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要約

草生帯の赤土流出軽減効果の評価に用いる土砂輸送モデルを提案する。本モデルは、草生帯の各種条件下における土砂輸送過程を数値計算によって再現することができ、赤土流出対策のための草生帯の諸元決定の際の事前評価ツールとして活用できる。

  • キーワード:草生帯、赤土流出、土砂輸送モデル
  • 担当:農工研・農地・水資源部・農地工学研究室
  • 連絡先:電話029-838-7553
  • 区分:農村工学
  • 分類:技術及び行政 普及

背景・ねらい

沖縄地方では、降雨時に畑地からの赤土流出が発生して、水質汚濁や土砂堆積により公共用水域の環境に悪影響を与えている。このた め、畑地からの赤土流出対策が急務である。草生帯は、植生を用いて土砂を捕捉する土砂流出対策技術であり、赤土流出対策にも有効である。しかし、草生帯の 各種条件と対策効果の関係が十分に示されておらず、多様な条件が想定される現地圃場において合理的かつ適切な草生帯の設計を行うことができない。
そこで、赤土流出対策を目的とした草生帯の設計に資するため、草生帯の赤土流出軽減効果の評価に用いる土砂輸送モデルを提案する。

成果の内容・特徴

  • 本モデルは、圃場下流端に設置された草生帯に流入する表面流出水の流速が、植生の抵抗を受けて低下して、表面流出水に含まれる土砂の一部が沈降・堆積し、その他の土砂が草生帯の下流へ輸送される過程を再現する(図1)。
  • 本モデルは、現地で想定される草生帯の設置条件(地形勾配や草生帯の長さなど)、草生帯上流側の表面流出水の流入流量、土砂濃度等を入力すると、草生帯下流側の表面流出水の土砂濃度等を数値計算により算出する(図2)。これにより、各条件における草生帯の赤土流出軽減効果を事前に評価することが可能である。
  • モデルの基礎式は、草生帯付近の流れの不等流式と土砂の連続式で構成される。モデルでは、土砂を4つの土砂粒径クラスに区分して取り扱う。また、モデルでは、草生帯内における地下浸透水量および浮遊土砂の巻上げ量をゼロと設定している。
  • 本モデルによって、現地試験区において観測された、草生帯を通過した表面流出水の土砂濃度の継時的変化や、草生帯を通過した流出土砂の土砂回収期間ごとの土砂量が再現され(図3、図4)、本モデルの現地適用性が確認されている。

成果の活用面・留意点

  • 赤土流出対策のための草生帯の諸元決定の際の事前評価ツールとして活用できる。
  • 本モデルでは、草生帯の草種としてセンチピードグラスを対象としている。他の草種に関しては、流れの抵抗に関するパラメータを別途決定する必要がある。

具体的データ

図1 草生帯による赤土流出対策の概念図 図2 モデルによる計算フロー

 

図3 草生帯を通過した表面流出水の土砂濃度の実測値Cobsと計算値Ccalの継時的変化 図4 草生帯を通過した土砂の回収期間ごとの土砂量の実測値SYobsと計算値SYcalの比較

その他

  • 研究課題名:農村地域における健全な水循環系の保全管理技術の開発
  • 実施課題名:沖縄地方における遊休農地の植生が持つ微細土砂捕捉機能の評価手法に関する研究
  • 課題ID:421-a-00-006-00-I-07-8607
  • 予算区分:科研費
  • 研究期間:2005~2007年度
  • 研究担当者:塩野隆弘、原口暢朗(九沖農研セ)
  • 発表論文等:
    1) Shiono et al. (2006) Fine sediment transport in open channel flow with a simulated grass strip, Proc. 14th ISCO Conf. http://tucson.ars.ag.gov/isco/isco14/Proc2006.zip: 5p.
    2) Shiono et al. (2007) Performance of grass strip for sediment control in Okinawa, JARQ 41(4): 291-297