ハクサンハタザオを用いたカドミウム含有土壌の浄化能力

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要約

カドミウムの高集積植物であるアブラナ科植物「ハクサンハタザオ」をカドミウム含有土壌地で栽培し、土壌中のカドミウムを植物体中に高濃度で吸収することにより、汚染土壌を効率的に浄化する。

  • キーワード:カドミウム汚染土壌、植物浄化、ハクサンハタザオ
  • 担当:農工研・施設資源部長、農地・水資源部・農地工学研究室
  • 連絡先:電話029-838-7569
  • 区分:農村工学
  • 分類:技術及び行政・参考

背景・ねらい

カドミウム汚染土壌対策として、水稲等に対する吸収抑制対策(客土対策、水管理による吸収抑制)、水稲以外の農作物の土壌改良剤 等による吸収抑制技術、土壌洗浄による浄化等があげられ、これらの方法は一定の効果を挙げている。このほかに植物による浄化があり、客土などと比べて低コ スト・低環境負荷型の新しい汚染浄化方法であるため実用化が期待される。本研究では他の対策と併用し、相乗効果が期待される植物浄化方法として、アブラナ 科植物「ハクサンハタザオ」を利用し、連作した場合のハクサンハタザオのカドミウムの吸収能力を検証する。

成果の内容・特徴

  • 図1は A地区鉱山跡地周辺でのスクーリング調査から、各植物体中の重金属濃度を測定し、その主な結果を示したものである。カドミウムについてはハクサンハタザオ のカドミウム(以下Cdと略す)濃度は252mg/kgで、他の植物に比べ高濃度に集積していることを発見した。他の鉱山跡地周辺での調査結果を合わせる とカドミウム濃度は252~1,700mg/kgであることがわかり、Cd汚染土壌の浄化植物として十分な吸収能力がある。
  • Cd含有土壌を対象にハクサンハタザオをポット栽培で5作繰り返し、土壌中のCd濃度(0.1N HCl抽出 )の減少量及び浄化速度の変化を調べた結果を図3に示す。土壌中Cd濃度は浄化前の3.5 mg/kgから0.6mg/kg程度まで減少していることから、ハクサンハタザオが土壌から多量のCdを吸収することが明らかであり、浄化植物として有望であると考えられる。
  • 屋外栽培試験の結果は土壌中からのCd除去量は、土壌のCd含有量からの計算値では1作目で2,188g/ha,2作目で1,012g/haと算出された。図4は土壌中のCdの減少量を示したものである。本実証試験地のデータでは1作目で土壌中Cd含有量の約47%が吸収、除去されたことが確認できた。2作目の除去量は1,012 g/haであり、1~2作目で土壌中カドミウム含有量の約69 %が吸収された。
  • 施肥によって植物の乾物生産量は0.15 kg/m2から0.38kg/m2に増加し、施肥により植物収穫量の増加が可能であり、ハクサンハタザオを利用した植物浄化は可能である。なお、2、3のデータは施肥を行った場合のデータに基づいたものである。

成果の活用面・留意点

  • 土壌タイプの違い、土壌中の初期Cd含有量の違いによるハクサンハタザオのCd吸収能力の検証のため、さらなる実証試験が必要である。
  • 実用化、普及のためには浄化後の植物の乾燥・保管、精錬工場までの運搬システムの整備、浄化システムの計画・評価方法及びコスト算定方法等の検討が必要である。
  • 想定されるユーザーは県農業研究センター、JA等。

具体的データ

図1 植物体の重金属の濃度(A地区鉱山跡地周辺)図2 開花したハクサンハタザオ

 

図3 繰返し栽培による土壌中のCd含有量の変化(ポット試験、施肥条件)図4 ハクサンハタザオを用いたファイトレメデイエーションよる試験地の表層15cm土壌のカドミウム含有量の変化(施肥条件、3作目は試験中で予想値である)

 

その他

  • 研究課題名:持続的利用可能な高生産性土地基盤の整備技術の開発
  • 実施課題名:ハクサンハタザオを用いたカドミウム含有土壌の浄化方法の開発
  • 課題ID:412-b-00-005-00-1-07-5504
  • 予算区分:交付金研究(強化研究費)
  • 研究期間:2007~2009年度
  • 研究担当者:谷 茂、亀山 幸司、菅原玲子((株)フジタ技術センター)
  • 発表論文等: 1)谷 茂(2008)ハクサンハタザオによるカドミウム含有土壌の浄化、科学、岩波書店、78(2):1-5