瀬淵工法による排水路内での瀬淵構造の形成・維持過程

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要約

瀬淵工法は排水路内に瀬淵構造を形成する機能を持つ。生物の生息にとって多様な環境を提供する瀬淵構造は、年に3~4回発生する出水ごとに形成、発達、変形を繰り返すが、工法の機能を通じてその構造は維持される。

  • キーワード:瀬淵工法、瀬淵構造、排水路
  • 担当:農工研・施設資源部・水路工水理研究室
  • 連絡先:電話029-838-7566
  • 区分:農村工学
  • 分類:技術及び行政・参考

背景・ねらい

瀬淵工法は、柵渠排水路のアームに切り欠きを千鳥状につけることで水みちを蛇行させ、流速の変化と底質の移動によって、水路内に瀬淵構造を形成する機能を持つ。
瀬淵構造(例えば、水路や河川で形成される交互砂州のように、瀬と淵が交互に配置されている構造)は、生物の生息にとって多様な環境を提供するものであるが、様々な流量が流れる現地排水路においては、これらが常に形成・維持されるとは限らない。
そこで、瀬淵工法の現地実証試験を行い、瀬淵構造の形成・維持過程を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • 平坦で単調な水路地形を持ち、出水時には底質が流されるような現地排水路を対象とし、瀬淵工法を導入する。瀬淵工法および現地実証試験の概要を図1に示す。
  • 瀬淵構造が形成、発達、変形するのは、年に3~4回程度発生する出水時である。図2は、出水イベントと瀬淵構造の経時変化の関係を表している。
  • 図2のnkk07-30-1t.gifnkk07-30-2t.gifは、それぞれY=90cm、Y=50cm上の地形標高の平均値を表している。これらの差nkk07-30-1t.gif-nkk07-30-2t.gifが大きいときに、明瞭な瀬淵構造が形成されている。たとえば、図4(b)は図4(a)に比べ、より明瞭な瀬淵構造が認められるが、これはnkk07-30-1t.gif-nkk07-30-2t.gifの変化過程と対応している。
  • 図3は、横断水路地形(nkk07-30-3t.gifを プロットしたもの)の出水イベントごとの変化を表している。水みちができる水路中央付近で洗掘傾向、側壁付近で堆積傾向が表れ、上下動することから、瀬淵 構造の形成、発達、変形が確認できる。とくに、Y80~90付近では、堆積部分に植生が出現し、植生が土砂を捕捉することで瀬淵構造が発達し(出水3以 降)、地形標高が上昇する(図4)。
  • 以上の実証結果から、図1の瀬淵工法の機能を通じて、現地排水路に瀬淵構造が形成・維持されることが示される。

成果の活用面・留意点

  • 瀬淵工法の適用範囲(室内実験の結果を含む)、作製、設置、維持管理方法については、「自然再生のための住民参加型生物保全 水利施設管理システムの開発(ISBN978-4-9904047-0-3)」の中にマニュアルとして収録している。これはDVD化されており、環境施策 を実施しようとする地方自治体や土地改良区の職員、団体等が活用できる。
  • 瀬淵工法を導入する排水路は、上流から土砂が供給されること、土砂を流送させるのに十分な掃流力(勾配、水位など)を有することが必要である。

具体的データ

図1 瀬淵工法および現地試験の概要

 

図2  の変化と出水イベントとの関係

 

図3 横断水路地形の出水ごとの変化

 

図4 出水による瀬淵構造の発達

 

その他

  • 研究課題名:地域資源を活用した豊かな農村環境の形成・管理技術の開発
  • 実施課題名:生物保全低コスト改修工法の開発
  • 課題ID:421-d-00-004-00-I-07-9408
  • 予算区分:競争的資金(生物保全)
  • 研究期間:2003~2007年度
  • 研究担当者:向井章恵、樽屋啓之、田中良和、加藤敬
  • 発表論文等:向井ら(2006)環境配慮型水路工法における水路床変動の実験、農工研技報、204:273-280