流水で摩耗を受ける農業水利施設のセメント系材料の耐久性評価手法

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要約

流水による摩耗劣化が生じる農業水利施設の部位に用いられるセメント系材料の試験体に対して、高圧の水噴流を衝突させて摩耗を促進し、摩耗表面形状の変位を測定することで、材料の耐摩耗性や摩耗表面形状の経時変化などの相対的な耐久性評価が可能である。

  • キーワード:摩耗、セメント、材料、耐久性、農業水利施設、水噴流
  • 担当:農工研・施設資源部・水利施設機能研究室
  • 連絡先:電話029-838-7573
  • 区分:農村工学
  • 分類:技術及び行政・参考

背景・ねらい

農業水利施設においては、流水にさらされる部分で摩耗劣化が進行する。流水による摩耗では、骨材を含むセメント系材料の場合、セ メント分が先に除去され、骨材が残り、摩耗表面が凸凹となる。従来のテーバー式などの摩耗試験では、この摩耗状況を再現できない。そこで、流水による摩耗 状況を再現できる摩耗試験機を製作し、セメント系材料の耐摩耗性や摩耗表面形状の経時変化などの耐久性を相対的に評価する手法を開発する。

成果の内容・特徴

  • 摩耗試験機は、試験体を取り付ける本体と水噴流を発生させる吐出装置により構成される(図1)。 本体は、試験体6個を設置可能な回転ドラムとドラムを回転させる駆動モーターで構成される。駆動モーターの回転を制御することにより、ドラムを一定速度で 回転させることが可能である。吐出装置は、プランジャポンプ、耐圧ホース、ノズルより構成される。吐出装置の使用液体は水道水で、プランジャポンプにより 加圧された後、耐圧ホースを経て本体の回転ドラム中心部に設置されたノズルより試験体に噴射される。水噴流の吐出圧力は試験目的に合わせて任意に設定可能 である。
  • 水噴流による摩耗試験であるため、セメント分が先に除去される実際の水路の摩耗状況に近い表面状態が得られ、また、レーザー変位計を用いた試験体表面の形状計測により、平均摩耗深さ、表面粗さ指標Ln/50等の経時変化を定量的に把握できる(図2)。
  • セメント系補修材料6種の試験例では、摩耗深さの経時変化(図3)は、材料により相違すること、そして、概ね200時間以降は各材料ともほぼ一定の増加率で摩耗が進行していることが示されている。また、表面粗さ指標Ln/50の経時変化(図4)は、いずれの材料においても時間経過とともに増加するが、その程度は材料により相違することが示されている。
  • 水噴流を用いた促進摩耗試験により、補修・補強材料の耐摩耗性や摩耗表面形状に関する耐久性を相対的に評価することができる。

成果の活用面・留意点

  • 流水による摩耗劣化が想定される農業水利施設の建設および補修・補強工事の発注者においては、使用材料選定の際、本試験の結 果を参考にできる。また、材料開発メーカーにおいては、開発材料の耐摩耗性や表面粗さの経時変化特性が要求性能を満たしているか否かの評価に用いることが できる。
  • 実構造物の摩耗劣化時間と本試験の促進摩耗時間との関係については今後検討する必要があり、本試験手法を用いた材料評価を現時点で実施する際には、比較対象材料の相対評価のみが可能であることに留意する必要がある。

具体的データ

図1 摩耗試験機の概要

 

図2 コンクリートの摩耗状況および表面粗さ指標Ln/50の定義

 

図3 セメント系補修材料の摩耗深さ変化

 

図4 セメント系補修材料のLn/50変化

 

その他

  • 研究課題名:農業水利施設の機能診断・維持管理及び更新技術の開発
  • 実施課題名:農業用水路のコンクリート表層劣化メカニズムの解明
  • 課題ID:412-a-00-001-00-I-07-4102
  • 予算区分:交付金研究
  • 研究期間:2006~2008年度
  • 研究担当者:渡嘉敷勝、森充広、増川晋、中矢哲郎、森丈久、長束勇、石村英明、石神暁郎(ショーボンド建設(株))
  • 発表論文等:
    1)石神ら(2005)農業用水路コンクリートに生じる摩耗現象と促進試験方法に関する検討、コンクリート工学年次論文集、27(1):805-810
    2)渡嘉敷ら(2006)水流摩耗試験機を用いたモルタルおよびペーストの摩耗試験、コンクリート工学年次論文集、28(1):695-700
    3)森ら(2007)「摩耗試験装置およびその方法」特許第3924599号