農家・地域住民による水路の簡易点検・診断・補修マニュアル

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要約

小規模コンクリート水路を対象として、農家等の直営施工による適切な補修が可能な変状か否かの判定方法やその具体的な簡易補修方法を解説したマニュアルであり、「農地・水・環境保全向上対策」の取組に活用できる。

  • キーワード:農地・水・環境保全向上対策、コンクリート水路、簡易補修、直営施工
  • 担当:農工研・施設資源部・水利施設機能研究室
  • 代表連絡先:電話029-838-7572
  • 区分:農村工学
  • 分類:技術及び行政・普及

背景・ねらい

全国で「農地・水・環境保全向上対策」の取組が始まり、農業用水路についても、農家や地域住民による点検や補修などの維持管理活動が行われている。しかし、必ずしも適切な補修が行われているとはいえず、補修後短期間で再劣化する事例が見られる。このため、水路に生じた変状について、発生原因等を的確に把握し、適切な補修工法を選定することが不可欠である。 そこで、幅や深さが概ね1m程度までの小規模コンクリート水路を対象として、水路に生じている変状を農家や地域住民の直営施工によって適切に補修できるか否かを判定する方法や、特殊な機械・機具を用いずに行える変状の簡易補修方法等を具体的に解説したマニュアルを作成する。

成果の内容・特徴

  • 北海道、青森県、千葉県、新潟県、岐阜県、京都府、島根県、宮崎県で開催された水利施設の簡易補修等に関する研修会(全国水土里ネット主催)に参加した土地改良区等の施設管理者448人(回収率63%)を対象に、水路の補修状況に関するアンケート調査を行った。その結果、目地の簡易補修が最も多く、欠損部(骨材露出)の簡易補修、ひび割れ箇所の簡易補修、水路の嵩上げ、破損箇所の撤去・新設が主要な補修内容となっている(図1)。
  • 現場でよく行われる補修の原因となる主要な変状については、簡易補修適用性判定表(表1)により、変状の特徴と原因、必要な対策、農家等の直営施工による簡易補修の可能性が容易に判定できる。
  • 簡易補修が可能な目地の損傷やひび割れについては、施工の簡易性、耐久性、価格などの評価項目に基づき、現場のニーズに応じた簡易補修工法の選定が可能である。また、補修に用いる道具類、補修材料の種類と特性、各種補修材料を用いた具体的な補修手順・留意事項を示すことにより、補修工事の経験の乏しい農家や地域住民でも容易に直営施工により水路補修が行える。

成果の活用面・留意点

「農地・水・環境保全向上対策シリーズ 農家ができる水路の点検・補修入門ビデオ&DVD」シリーズの「No.5 水路を長持ちさせるには?」(図2の右)、同シリーズの「No.6 水路の簡易補修マニュアル」(図2の中央)および「農地・水・環境保全向上対策支援テキスト、水路の簡易補修マニュアル」(図2の左)に本研究成果は収録されている。これら三点は、(社)農文協(農村工学研究所水利施設機能研究室監修)から発行されている。これらにより、農地・水・環境保全向上対策の一環として、農業用水路の点検や補修に取り組む農家や地域住民による活用が期待される。

具体的データ

図1 農業用水路における補修の実施状況

図2 水路の簡易補修マニュアル

表1 農業用水路の簡易補修適用性判定表

その他

  • 研究中課題名:農業水利施設の機能診断・維持管理及び更新技術の開発
  • 実施課題名:補修事例に基づく農業用水路機能管理のための簡易点検手法の開発
  • 実施課題ID:412-a-00-004-00-I-08-4406
  • 予算区分:交付金プロ(資源保全)
  • 研究期間:2006~2008年度
  • 研究担当者:森丈久、中矢哲郎、渡嘉敷勝、森充広
  • 発表論文等:1)森ら(2008)農業農村工学会誌、76(3):19-22