コンクリート水路の接着型テープによる簡易漏水補修工法

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要約

小規模農業用コンクリート水路の目地を対象とした、高耐久性テープとシーリング材を用いた簡易漏水補修工法である。開発した工法は、シーリング材、接着剤の持つ良好な止水性や耐久性を有効活用でき、農家や地域住民による直営施工が可能である。

  • キーワード:コンクリート水路、簡易補修、直営施工、シーリング材、漏水
  • 担当:農工研・施設資源部・水利施設機能研究室
  • 代表連絡先:電話029-838-7573
  • 区分:農村工学
  • 分類:技術及び行政・普及

背景・ねらい

近年、圃場末端の小規模な農業用水路の老朽化とそれに伴う機能低下が問題となっている。特に水路目地やひび割れからの漏水は水利用機能の低下だけでなく、農地の湿害や作業性の低下を招く。このような機能低下に対し、シーリング作業などによる止水処理が行われているが、コンクリートカッターなど専用工具を必要とする作業は農家には行い難く、材料の持つ良好な止水性や耐久性を有効活用できていない場合が多い。よって1幅1m 程度の小規模農業用コンクリート水路を対象とすること、2目地部の漏水を止水すること、3大がかりな電動工具を用いないこと、4経済性と耐久性を有すること、を目的として農家・地域住民らによる直営施工が可能な簡易漏水補修工法の開発を行う。

成果の内容・特徴

  • 現地調査を基に性能を決定した本簡易漏水補修工法は、機能低下した目地部を高耐久性テープで補修するもので、農家・地域住民による施工が可能である。施工は、1目地に沿って躯体表面を洗浄し乾燥させる、2シーリング材または接着剤を塗布する、3高耐久性テープを貼り付ける、という簡略化された作業手順で行う(図1)。現地調査により地域住民でも短時間で施工が可能であることを確認している(図2)。
  • 高耐久性テープの要求性能は、屋外暴露3年以上経過後に外観変状がないこと、ひび割れ追従性試験(土木学会規準:JSCE-K 532 準拠)における最大荷重時の変位量1mm以上(スパン長:2m,コンクリートの熱膨張係数:1.0×10-5/°C,外気温変化:50°C、を想定した時の変位量に相当)、シーリング材、接着材と良好な接着力を有すること、低価格であること(1mあたり1000円以内)、である。
  • これまでの目地の簡易補修の不具合の主な原因は、紫外線による劣化かコンクリート躯体の伸縮挙動による破損である。今回開発した工法は、シーリング材の紫外線劣化を保護するために高耐久性テープとして耐候性に優れるフッ素樹脂系フィルムを用いており、柔軟性を有するシーリング材または接着剤と、柔軟性を有する高耐久性テープを用いることで温度変化による目地間の伸縮挙動に追随する。よって、材料の早期の劣化を防ぎ、長期間にわたり止水性が維持される(図3)。
  • 水頭差1mに相当する水圧0.01MPa における漏水量試験では、いずれの仕様においても漏水は確認されず、目地間の伸縮挙動に対する追従性試験では、全ての仕様において一般的な小規模コンクリート水路の目地部における伸縮量1mmを上回り良好な性能を示す(表1)。
  • 現地の農業用小規模水路における耐久性の実証試験では、1年間経過後も変状はみられず、良好な止水性を継続している(表1)。

成果の活用面・留意点

農地・水・環境保全向上対策の一環として、農業用水路の簡易補修への活用が期待できる。

具体的データ

図1 施工手順

図2 農家による施工状況

図3 止水性・耐久性のメカニズム

表1 工法の性能

その他

  • 研究中課題名:農業水利施設の機能診断・維持管理及び更新技術の開発
  • 実施課題名:補修事例に基づく農業用水路機能管理のための簡易点検手法の開発
  • 実施課題ID:412-a-00-004-00-I-08-4406
  • 予算区分:交付金プロ(資源保全)
  • 研究期間:2006~2008年度
  • 研究担当者:中矢哲郎、森丈久、渡嘉敷勝、森充広、石神暁郎((株)ショーボンド建設)、
                       加藤智丈((株)ショーボンド建設)、江口和雄((株)ショーボンド建設)
  • 発表論文等:1) 中矢ら (2008)「コンクリート水利構造物の漏水補修材およびその補修材を用いた
                           漏水補修方法」特許出願2008-312601