農業用開水路壁面凹凸を定量的に評価する方法
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要約
農業用開水路の表面は、流水をはじめとする様々な要因によって凹凸状態が作られる。この凹凸の状態を精度よく定量的に表す評価基準を設定することにより、目視観察による劣化診断の評価の精度向上を図る。
- キーワード:農業用開水路、壁面凹凸、算術平均粗さ、健全度
- 担当:農工研・農村総合研究部・地域資源保全管理研究チーム
- 代表連絡先:電話029-838-7557
- 区分:農村工学
- 分類:技術及び行政・参考
背景・ねらい
農業水利施設の適時・適切な維持補修を実施し、施設の長寿命化を図るとともにライフサイクルコスト(施設の建設、維持管理等に係る全てのコスト;LCC)の低減を図るため施設の点検が進められている。農業用開水路は施設が長大であることから維持管理の点検や劣化状態の把握は目視が主体となる。開水路壁の表面は、流水をはじめとする様々な要因による凹凸状態が観察されるが、目視で劣化診断を行う場合、点検者の違いによる誤差が精度に影響を及ぼすことが懸念され、客観的に記録することが求められている。このため水路壁面凹凸を定量的に評価する基準を設定することにより、劣化診断の精度向上を図る。
成果の内容・特徴
- 水路壁面凹凸状態を表す目視の評価基準(健全度)を5段階に設定する(図1)。
- 5段階の健全度に対応した標準供試体を作成し、その表面の凹凸高さを数値化し、更に算術平均粗さに変換する。表面凹凸の高さは、レーザー変位計又は木や金属の曲線の型を取るゲージ(型取りゲージ)を用いて測定する(図2)。
- 算術平均粗さ(Ra)は、数値化された凹凸高さの値から凹凸曲線を作成し、平均線を算出する。平均線を基準にして凹凸の高さの差の絶対値を合計し、これを測定した幅で割った値を算術平均粗さとする。Raは一つの大きな凹凸が測定値に及ぼす影響が非常に小さくなり、安定した結果が得られるという特徴を持つ。
- 算出された算術平均粗さと健全度について、健全度の数値を5点満点のスコアとして作成した相関図から、健全度と算術平均粗さが強い直線的な相関関係を持つことが示される(図3)。
- 供試体を用い求められた値は、同様の凹凸状態が平均的に分布した標準状態のものであることから、標準値として現場の劣化診断へ適用ができる(表1)。
成果の活用面・留意点
- 農業用開水路の劣化診断を行う現場技術者が活用できる。
- 現場の凹凸は均一でないことから、実施地区ごとに劣化の目視評価基準である健全度を定め算術平均粗さとの整合を検証しておく必要がある。
具体的データ




その他
- 研究中課題名:農業水利施設の機能診断・維持管理及び更新技術の開発
- 実施課題名:LCC低減のための住民参加型の施設の点検・モニタリング手法の開発
- 実施課題ID:412-a-00-004-00-I-08-4402
- 予算区分:交付金プロ(資源保全)
- 研究期間:2006~2008年度
- 研究担当者:本間新哉、北村浩二、加藤敬
- 発表論文等:1)北村ら(2008)農業農村工学会誌、76(9):35-40