夏季におけるフェンロー型温室内の気温分布のCFDシミュレーション
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要約
夏季にフェンロー型温室で天窓換気をしたときの気温は、風上側が風下側よりも高かったが、CFDシミュレーションによって室内の気流・気温分布を解析すると、室外の風向きと逆向きの気流が形成され、風上側に気温の高い部分が発生することが示される。
- キーワード:自然換気、気温分布、気流分布、CFD
- 担当:農工研・農村総合研究部・農業施設工学研究チーム
- 代表連絡先:電話029-838-7655
- 区分:農村工学
- 分類:技術及び行政・参考
背景・ねらい
フェンロー型温室は構造部材が細く光環境に優れ、建設コストも安価であることから、大規模な温室を建設するケースが増えているが、温室の周年利用のためには強日射時の高温抑制が重要となっている。また、温室の連棟数が増えた場合、室内の気流や気温に偏りが発生することも問題となっている。数値流体力学(Computational Fluid Dynamics:CFD)は温室の換気特性を解明するための有効な一つの手法であるが、自然風や太陽光の影響を含めて解析した例は少ない。本研究では、夏季にフェンロー型温室で天窓換気をしたときに測定した室内気温の実測値と、CFDの手法に自然風および日射モデルを適用して求めた室内気温の計算値を比較し、CFDの計算精度を検証する。加えて、天窓換気時のフェンロー型温室内の気流・気温特性をCFDシミュレーションによって解析する。
成果の内容・特徴
- 2004年7月23日(晴れ、14:10~14:30)に静岡県三島市の17連棟のフェンロー型温室(間口54.4m、奥行32m、軒高4.0m、棟高4.7m、南北棟)で、温室中央断面上の5地点(A、B、C、DおよびE)の地上高さ1.4mの気温を測定した。換気窓にはフェンロー型温室特有の分離天窓が装備されており、測定時の開度は23oである(図1)。
- CFDシミュレーションの境界条件には、温室内の気温測定に合わせて観測した気象データ(風向、風速、日射量、外気温)を用い、風向は東風、地上5mの高さの風速は2.7m/s-1、日射量は703W/m-2、外気温は29.1°Cを定常値として与えている(図2)。
- フェンロー型温室で測定した内外気温差は、風下側のE点が最も低かったのに対し、風上側のA点が最も高かった。また、内外気温差の実測値とCFDの計算値の誤差は最大1.7°Cであり、CFDは温室内の気温を比較的精度良く再現できる(図3)。
- フェンロー型温室は天窓換気が一般的であるが、天窓換気時の温室内の中央断面上の気流は、屋外気流が風上側の軒付近で剥離し、風下側の屋根面で再付着した後、風下側の天窓から多く流入する。この風下側の天窓から流入した気流は、室内の床面付近に降下した後、室外の風向きと逆方向の気流となる(図4-A)。
- 天窓換気時の温室内の中央断面上の気温は、風上側の棟が最も高く、風下の棟では低くなる(図4-B)。これは、室外の風向きと逆方向の気流が室内で形成されることにより、風上側に気温の高い部分が発生することを示す。
成果の活用面・留意点
- 施設経営農家、普及機関、研究機関、温室関連メーカー等にとっては、フェンロー型温室で天窓換気を行ったときの室内気温や気流分布の特徴を示す資料となる。
- 本研究では、床面積が1740m2のフェンロー型温室を対象としたが、様式や規模が異なる温室の換気特性を検討する場合は別途、計算する必要がある。
- 本成果は、蒸発散や植物群落の気流抵抗の影響を考慮していない。
具体的データ




その他
- 研究中課題名:農業施設の耐風構造と複合環境制御技術の開発
- 実施課題名:数値流体力学による温室内気流・温度環境の解析手法の開発
- 実施課題ID:213-h-00-002-00-I-08-2201
- 予算区分:交付金研究
- 研究期間:2006~2008年度
- 研究担当者:石井雅久、森山英樹、奥島里美、佐瀬勘紀・林 真紀夫(東海大開発工)
- 発表論文等:1)Ishii M. et al. (2008) Acta Hort. 801: 941-948