集落環境点検等における地域資源を活かした構想づくりを促す発想支援法

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要約

集落環境点検等により抽出した地域資源に対して複数の分類軸を組み合わせた分類を参加者自らが行い、現況に対する評価視点を明確化することにより、点検マップを用いて地域の個性を活かした発想を促すことができる。

  • キーワード:集落環境点検、ワークショップ、発想支援、地域資源活用
  • 担当:農工研・農村計画部・集落機能研究室
  • 代表連絡先:電話029-838-7669
  • 区分:農村工学
  • 分類:技術及び行政・参考

背景・ねらい

地域づくりワークショップにおいてしばしば活用される手法である集落環境点検では、現地踏査による地域資源の抽出(写真撮影)を行い、現況への評価を点検マップとして図化した後、将来に向けた活性化策を発想することが多い。しかしながら、地域の個性を活かした独創的な発想を生み出すのは容易なことではない。そこで、抽出した地域資源(写真)に対する分類を参加者自らが作成し、現況への評価視点を明確にすることで、点検マップを用いて発想を促す支援手法を提案する。

成果の内容・特徴

  • 本手法では、現地踏査の結果から点検マップを作成するまでの共同作業を「現状マップ」「地域資源の分類」「点検マップ」に3分割し、従来の手順と比べてより細かい進行支援を行う(図1のA→B→C)。「現状マップ」とは、撮影された写真に対して撮影対象とその理由を要約したコメントを書き添えることで、現地踏査の結果をそのまま図上に配置したものである。その後、「地域資源の分類」を踏まえ、評価の視点を明確化した「点検マップ」を作成し、それをもとに活性化策を発想する。
  • 「地域資源の分類」では(図1のB)、撮影した写真を見ながら地域資源の多様な分け方(分類軸)を考え、複数の軸を自由に組み合わせてもらい、住民の関心を踏まえて地域を特徴づける分類を参加者が作成し、評価の視点を選定する。そして、個々の分類が示す意味を検討しながら、写真を振り分けていく。地域資源の分類結果を図上で表現することで空間的な要素も含めた現況を示す点検マップが作成される。
  • 点検マップにおける地域資源の評価視点が目に見える形で共有化されることで明確になるとともに、地域の状況に即した分類を参加者自らが作成することで、マップの内容・表現が個性的で身近なものとなり、点検マップをもとにした活性化策の発想と構想づくりが促される。
  • 集落環境点検を題材とした試行では(図2)、都市農村交流への期待という対象地域のニーズを踏まえ、「お金になるか」と「デートコースになるか」という分類軸を組み合わせた地域資源の分類を行った結果、都市部向けの情報誌として点検マップの作成、将来構想として周遊コースづくりの提案など、地域住民の期待やニーズを反映した発想が得られ、現地での実践性が検証されている。

成果の活用面・留意点

  • 一般のワークショップと同様、円滑な作業の流れを促すための進行支援役が必要となるが、必ずしも特別な経験は要しない。
  • 限られた時間内に実施する場合には「地域資源の分類」のための分類軸をあらかじめ用意しておくなど、参加者の作業負担を減らす工夫が必要となる。
  • 軸の組み合わせの選定方法については、地域の課題やニーズを踏まえているかどうかが、判断の目安となる。
  • 分類のために組み合わせる軸の数が3以上になると、作業負担が大きくなる。

具体的データ

図1 発想支援に向けた作業の流れ

図2 参加者が作成した地域資源分類による発想支援の試行結果

その他

  • 研究中課題名:農村地域の活力向上のための地域マネジメント手法の開発
  • 実施課題名:地域づくりワークショップ等における参加型手法の高度化
  • 実施課題ID:413-a-00-002-00-I-08-7201
  • 予算区分:交付金研究
  • 研究期間:2006~2008年度
  • 研究担当者:安中誠司、唐崎卓也
  • 発表論文等:1)安中ら(2008) 第56回日本農村生活研究大会要旨:45