農村地域資源の協働管理を実施する活動類型と地域区分

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要約

農村地域資源の協働管理について、参画する主体と管理対象とする資源から整理した活動類型と、地形条件と人口分布にもとづく活動対象地域の地域区分を組み合わせて分析を行った。この成果は、協働管理実施地区の現況と発展の方向の検討に役立つ。

  • キーワード:地域資源、参画主体、協働管理、活動組織
  • 担当:農工研・農村環境部・景域整備研究室
  • 代表連絡先:電話029-838-7583
  • 区分:農村工学
  • 分類:技術及び行政・参考

背景・ねらい

近年、農村における高齢化や混住化の進行にともない、農林地の管理水準の低下、既存の管理体制の脆弱化が進行している。そのため、農林水産省は平成19年度より地域資源の質を高める地域共同の取り組みを支援する「農地・水・環境保全向上対策」を進めている。本対策では、非農家や都市住民などの多様な主体を交えた協働管理が想定されている。しかしながら、実際の協働管理においては、農業者が管理したい資源と非農業者が活用したい資源のミスマッチが生じるなどの課題が存在する。今後、資源保全対策を実施する各地域が目指す協働管理の方向性を明らかにしていく上では、活動組織の現況と発展の方向を把握しておくことが重要である。本成果では、関東地方70地区の実施地区データから、参画主体と地域資源の関係を整理した活動類型と、地形条件と人口分布にもとづく地域区分を組み合わせて分析し、資源保全対策を実施する各地区の活動組織の現況と発展の方向を検討するための材料を提供する。

成果の内容・特徴

  • 協働管理の参画主体が農業や地域とどのような関わりを持っているかが重要な視点となるため、農業者と非農業者、地域組織(自治会と自治会下部組織:老人会、子供会など)と非地域組織(学校関連組織、NPO等)の関係の中で整理する(図1上)。
  • 協働管理の対象資源は、農地・水路・ため池などの農業者が管理の対象とする管理対象資源と、非農業者が活用の対象とする活用対象資源の2つに分けて整理する(図1下)。
  • 図2は、関東一都六県を対象に、標準地域メッシュ(約1km四方)を単位とした地形条件と人口分布にもとづく地域区分図である。地形条件については、国土数値情報(地形分類)を用い、山地・丘陵地・台地・低地の4区分に、人口分布については、国勢調査地域メッシュ統計(平成12年)を用い、DID相当地域(4000人以上)、都市的地域(500~4000人)、農村的地域(500人未満)の3区分に分類している。
  • 図3は、平成18年度農地・水・環境保全向上対策モデル支援事業地区に参加している関東地方70地区のデータから、参画している主体と活動対象となっている資源との関係を活動ごとに把握し、協働管理における管理・活用資源の重複度(縦軸)、非農家(農業への関わりの低い主体)の参加度(横軸)で類型化したものである。
  • 関東70地区について活動類型と地域区分との関係をみると、管理・活用資源の重複度、非農家の参加度の高い類型において、台地・丘陵地・山地の区分に偏る傾向が確認された。台地や丘陵地などの起伏を有し、比較的多種の資源を有する地区の協働管理は、多様な主体の参画を得た活動・対象資源の重複度の高い活動組織が多い傾向があることが分かる(図3)。

成果の活用面・留意点

本研究の成果は、農地・水・環境保全向上対策などの農村地域において展開される協働管理の実施地区において、当該地区の活動の現況と今後の活動のあり方を検討する際に活用できる。

具体的データ

図1 本成果における協働管理の参画主体・対象資源の捉え方

図2 地形条件と人口分布をもとにした地域区分(関東地方)

図3 農村地域において地域資源の協働管理を実施する活動類型と地域区分

その他

  • 研究中課題名:地域資源を活用した豊かな農村環境の形成・管理技術の開発
  • 実施課題名:地域特性を踏まえた環境協働管理のインセンティブ評価手法の開発
  • 実施課題ID:421-d-00-002-00-I-08-9202
  • 予算区分:交付金プロ(資源保全)
  • 研究期間:2006~2008年度
  • 研究担当者:栗田英治・山本徳司
  • 発表論文等:1) 栗田ら(2007)日本景観生態学会第17回福岡大会講演要旨集:54
                       2) Kurita H. et al (2008) US-IALE 2008 Abstract Book:86