摩耗したコンクリート水路の表層形状からの粗度係数推定手法

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要約

レーザー変位計を用いて、摩耗したコンクリート水路の表層形状を測定し、表面粗さを示すパラメータとして一般的に用いられる算術平均粗さもしくは最大高さを求めることにより、水路の通水性能を示すマニングの粗度係数を求める手法である。

  • キーワード:摩耗、コンクリート水路、マニングの粗度係数、表面粗さ
  • 担当:農工研・施設資源部・水利施設機能研究室
  • 代表連絡先:電話029-838-7573
  • 区分:農村工学
  • 分類:技術および行政・参考

背景・ねらい

農業用水路に求められる性能のうち、末端農地への水供給に影響する通水性能の指標には、一般的にマニングの粗度係数が用いられる。粗度係数の増加は,通水性能の低下だけでなく、流速減少に伴う土砂の堆積など、施設管理上の問題となることも報告されている。しかし、水路の摩耗による表層形状の変化が、どの程度粗度係数の増加に影響するかは定かではない。そこで、摩耗を模擬したコンクリート水路において、水理模型実験を行ってマニングの粗度係数nを実測し、表面粗さのパラメータから粗度係数を推定する方法を検討する。

成果の内容・特徴

  • 作製した模擬摩耗板328枚の凹凸形状をレーザー変位計で測定した時の、各種の表面粗さパラメータの平均値、及びその標準偏差σは、凹凸の最大高さRy(粗さ曲線の平均線から最も高い山頂と最も深い谷の合計)で4mm(σ=1.43mm)、算術平均粗さRaは0.5mm(σ=0.12mm)である。 この値は長期供用後(40年程度)の摩耗した水路の表層状態にほぼ一致している。模擬摩耗板は、表面に遅延剤を塗布した型枠にコンクリートを打設し、脱型した後、粗骨材が露出するまで洗い出しを行い摩耗状態を模擬する。模擬摩耗板の表面粗さの測定例は図1に示す。
  • 水理模型実験(水路幅60cm、水路長50mの可変勾配水路使用)によって求めた模擬摩耗水路の粗度係数nと開水路の流れの状態を表す指標であるフルード数との関係は、フルード数によらず一定値となることが示される(図2)。
  • 1.の条件における模擬摩耗水路の粗度係数nは0.013となり、この模擬摩耗板に最大寸法(Gmax)30mmの玉石を設置した水路の粗度係数は0.019となる(図2)。一方、平滑な表面である繊維補強モルタル水路の粗度係数nは0.010となり、摩耗が水路の通水性能に与える影響が確認できる。各材料表面の状態を図3に示す。
  • レーザー変位計等より求めた模擬摩耗板の最大高さRy 、算術平均粗さRaと、相当粗度ks(m)との関係を実験より求めると、ks =0.26×Ryks =2×Raとなる。したがって、レーザー変位計等を活用してRaRyを求め、流速分布の理論式から導いたストリクラーの式であるn=0.042ks1/6に、ksを代入すれば、材料の粗さデータのみから粗度係数を求めることができる。本式を、模擬摩耗板に玉石を設置した水路に適用したところ、実験より得られた粗度係数0.019を概ね推定できることを確認している(図4)。

成果の活用面・留意点

  • 現地の水路における本研究で提案した手法の適用性については今後検討を行う。
  • 本手法の対象は水路躯体の劣化による凹凸であり、砂礫や雑草等の維持管理上の影響評価は別途検討が必要である。

具体的データ

図1 模擬摩耗板の凹凸の形状の例

図2 フルード数と粗度係数の関係

図3 各種の表層状態の粗度係数

図4 粗度係数の推定状況

その他

  • 研究中課題名:農業水利施設の機能診断・維持管理及び更新技術の開発
  • 実施課題名:農業用水路のコンクリート表層劣化メカニズムの解明
  • 実施課題ID:412-a-00-001-00-I-08-4102
  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2006~2008年度
  • 研究担当者:中矢哲郎、渡嘉敷勝、森充広、森丈久
  • 発表論文等:1) 中矢ら(2008)、農業農村工学論文集、258:23-28
                       2) 中矢ら(2008)、第63回農業農村工学会中国四国支部講演会講演要旨集:58-60