マグホワイトと石灰窒素の併用による飼料イネのカドミウム吸収抑制効果

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要約

カドミウム汚染土壌にマグネシア系土壌硬化剤「マグホワイト」と石灰窒素を混合して、飼料用稲を湛水表面散播し慣行栽培すると、玄米、籾殻、わらのカドミウム吸収が抑制され、地上部の生育も対照区と同等となる。

  • キーワード:水稲、飼料用稲、カドミウム、マグホワイト、石灰窒素
  • 担当:農工研・農村総合研究部・水田汎用化システム研究チーム
  • 代表連絡先:電話029-838-7554
  • 区分:農村工学
  • 分類:研究・参考

背景・ねらい

食料自給率向上と食の安全・安心は国民生活において必要条件であり、主食であるコメについては、0.4mg/kg以上の玄米に対して流通防止対策がとられている。また、家畜の飼料については、1mg/kgを超えるものが販売されないよう指導されている。カドミウムの吸収抑制技術として湛水管理やアルカリ資材による吸収抑制技術が進められている。従来の客土による土木的対策では多額の費用を要するため、土壌改良資材等を用いた低コストなカドミウム吸収抑制技術を確立する必要がある。そこで、マグネシア系土壌硬化剤「マグホワイト」で生成するアパタイトによるCd不溶化(構造中へのCd取り込み)と石灰窒素による難溶性塩のカドミウムシアナミド(CdCN2)の生成、加えて石灰窒素とマグホワイトの併用によるCdCN2の安定化(マグホワイトのアルカリ作用)が水稲のCd吸収に及ぼす影響について検証する。本報では転作作物として有用である飼料イネを用い検証する。

成果の内容・特徴

  • 飼料イネ「モミロマン」を用いて、マグネシア系土壌硬化剤「マグホワイト」を乾土あたり0.3%で配合し、石灰窒素24kg/10a(基肥N5kg/10a)との併用によるCd吸収抑制効果をポット試験で検証する(表1)。
  • 栽培管理は、Cd吸収抑制で効果が確認されている出穂前後3週間の湛水管理で還元状態とする方法ではなく、中干しや落水管理を行う一般的な方法とする(表2)。
  • 地上部乾物重は、対照区と併用区では同等であったが、これらと比べてマグホワイト区(0.3%配合)と石灰窒素区では小さい(図1)。分けつ数の違いによると推察されたが、この原因は不明である。
  • 飼料イネの地上部平均のCd濃度は、対照区と石灰窒素区で高く、マグホワイト区と併用区で低い(図2)。特に併用区では、Cd濃度が高まりやすい「わら」で乾物当たり0.2mg/kg以下となる。
  • 跡地土壌のpHは、対照区が6.42に対し、マグホワイト区が7.23、石灰窒素区が6.72、併用区が7.52となり、マグホワイトのアルカリ作用を裏付けている。

成果の活用面・留意点

  • マグホワイトの配合は、0.1%では土壌との混合にムラが生じ、1%以上では生育障害が生じる。
  • 他の水稲品種や土壌条件において検証する必要がある。また、湛水処理との比較、湛水処理条件下での検証する必要がある。
  • 大豆についてはマグホワイトによるカドミウムの吸収抑制効果を確認している。

具体的データ

表1 材料と試験方法

表2 栽培管理表

図1 収穫調査結果

図2 地上部のカドミウム濃度

その他

  • 研究中課題名:持続的利用可能な高生産性土地基盤の整備技術の開発
  • 実施課題名:土壌汚染水田における作物の吸収抑制に係る基盤整備技術の評価・開発
  • 実施課題ID:412-b-00-005-00-I-08-5502
  • 予算区分:交付金研究
  • 研究期間:2006~2008年度
  • 研究担当者:藤森新作、若杉晃介、北川 巌、小堀茂次(東武化学(株))、増田隆仁、
                       一條利治(電気化学工業(株))
  • 発表論文等:1)藤森、若杉(2006)H18農土学会大会講演要旨:782-783
                       2)藤森、小堀(2005)「環境改善セメント組成物」特許3675766