不飽和状態における盛土材料の動的力学特性

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要約

土質材料の飽和状態の変化に伴い繰り返し載荷のせん断強度は変化し、微少ひずみ領域における繰り返し載荷の割線せん断剛性と等価せん断剛性も変化する。盛土構造物の動的挙動に反映される土質材料の繰り返し載荷時の力学特性は飽和状態の影響を受ける。

  • キーワード:盛土構造物、不飽和、繰り返し載荷、動的、力学特性
  • 担当:農工研・施設資源部・構造研究室
  • 代表連絡先:電話029-838-7571
  • 区分:農村工学
  • 分類:研究・参考

背景・ねらい

地盤材料は、土粒子骨格およびその間隙に存在する空気と水から成る多相混合体である。多くの地盤問題はこれら三相からなる不飽和地盤で発生しており、その力学特性の解明が要求されている。近年の世界的な研究の進展により、不飽和土の静的挙動についてはその力学特性が明らかにされてきている。しかしながら、我が国では地震に起因する不飽和地盤の問題も多くあり、不飽和土の動的挙動に関する力学特性の解明が要求されているものの、未だ十分に解明されていない。そこで、不飽和状態における土質材料の繰り返し載荷特性を把握するため室内要素実験を実施する。得られたデータを評価・検討することにより、不飽和土質材料の動的な力学特性である繰り返し特性を把握する。

成果の内容・特徴

  • 不飽和砂質土のせん断剛性は、サクション(s)が増加(含水量が減少)するに従い増加し、そのせん断強度も増大する(図1)。
  • 不飽和砂質土の微少ひずみ領域(せん断ひずみ<0.001)における繰り返し載荷時の割線せん断剛性は、サクション(s)が増加(含水量が減少)するに従い増加する(図2)。
  • 不飽和砂質土の微少ひずみ領域(せん断ひずみ<0.001)における繰り返し載荷時の等価せん断剛性はサクション(s)の増加に伴い増加するが、履歴減衰率はサクション(s)の影響を受けない(図3及び4)。
  • 以上から、サクションが土質材料の動的な力学特性に影響を与えることが明らかになった。つまり、サクションの増加(含水量の減少)に伴い土質材料のせん断剛性とせん断強度は増加し、これに伴い土質材料の繰り返し載荷時の力学特性が変化する。このことは、地震時に繰り返し荷重を受ける土構造物の安全性にサクションの変化が影響を与えることを示唆している。

成果の活用面・留意点

盛土構造物や地盤の地震時の安全性評価において参考となり、盛土構造物の設計・性能照査に従事する農業土木技術者の利用が期待できる。

具体的データ

図1サクション(s)によるせん断剛性及びせん断強度の変化(繰り返し三軸試験結果より)

図2片振幅せん断ひずみ約0.1%時における微小ひずみ領域における応力―ひずみ関係のサクション(s)による変化(繰り返し中空ねじり試験結果より)

図3サクション(s)による等価せん断剛性の変化

図4サクション(s)による履歴減衰率の変化

その他

  • 研究中課題名:地域防災力強化のための農業用施設等の災害予防と減災技術の開発
  • 実施課題名:不飽和堤体材料の繰り返し載荷特性の解明
  • 実施課題ID:412-c-00-001-00-I-08-6103
  • 予算区分:交付金研究
  • 研究期間:2006~2008年度
  • 研究担当者:林田洋一、向後雄二、中嶋(浅野)勇、増川晋、田頭秀和
  • 発表論文等:1) 林田ら(2006)第41回地盤工学研究発表会発表講演集:833-844
                       2) 林田ら(2007)第42回地盤工学研究発表会発表講演集:767-768