パイプラインの地震被害が集中する構造物周辺の減災対策

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要約

大規模幹線パイプラインは、地震時に曲管部における巻き立てコンクリート周辺が最も重大なウィークポイントとなり、二次被害に直結する場合がある。そのため、巻き立てコンクリートに替えて、曲管部と周辺の地盤を一体化することによって、パイプの抜け出し被害を大きく軽減できる。

  • キーワード:防災、地震被害、減災対策
  • 担当:農工研・施設資源部・土質研究室
  • 代表連絡先:電話029-838-7574
  • 区分:農村工学
  • 分類:技術及び行政・普及

背景・ねらい

全国に埋設されている農業用の幹線パイプラインは約12,000kmに達している。新潟県中越地震のような大規模な地震を受けて、パイプラインは壊滅的な被害を受けることが少なくない。様々な地形や地質が変化する地区を縦断するパイプラインの挙動を画一的に予測し、全体的な安全性を均一に確保することは極めて困難である。さらに、幹線パイプラインの被災は、道路の陥没や斜面崩壊などの二次被害の拡大とともに全線の復旧に時間を要し、営農に大きな負担をかけることが重大な課題となっている。 本研究では、被害実態に即した合理的な耐震対策技術の開発を目指したものである。このため、地震時のパイプの変形を限定的に許容するという「受働的安全性」の確保を目的として、具体的な減災対策技術を開発し、設計基準・指針等に反映する。

成果の内容・特徴

  • 地震時の地盤の液状化によってパイプが大きく移動して、抜け出した状況を写真1に示す。地震によって被災したパイプラインの調査・分析によって、抜けだしなどの重大な変状は構造物周辺に集中し、直線部分は補修で対応可能な比較的軽微な変状であることが明らかとなった。このことから、パイプラインの最大のウィークポイントは構造物周辺や地形、地質の変化点周辺のパイプにあると結論付けることができる。
  • 地震によって生じる巻き立てコンクリート周辺等(構造物周辺)のパイプラインの継手部の抜け出し量の分布を図1に示す。これを標準正規分布関数で近似して、大きく抜け出す確率φ(図中の式による)を求めると、構造物から3本目以降(直線部)の継手の被害確率は8.93×10-6で、1本目(構造物際)の値5.77×10-4と比べ,およそ65分の1となる。以上のことから、構造物際のパイプの耐震対策を実施することによって、重大な被害のほとんどを防止することができることがわかる。
  • 曲管部の耐震対策方法を図2に示す。通常のコンクリートブロック(CASE-A)、ジオグリッドによる補強(CASE-B)、ジオグリッドと砕石による対策(CASE-C)、CASE-Cの対策を曲管背面部まで拡張(CASE-D)した断面構造の有効性を振動実験によって確認した(パイプ直径200mm、モデル延長各1000mm)。周辺地盤が完全に液状化した場合でも、ジオグリッドで曲管と前後のパイプおよび周辺地盤を一体化する方法(CASE-C&D)は、従来工法(CASE-A)に比較してパイプの移動量を1/10以下(図3)に抑制する効果があり、高い減災機能を発揮することができる。

成果の活用面・留意点

  • 直径200mmまでのパイプラインについては対策工法の有効性を確認しており、安全性と経済性を含めた普及技術として提供可能であるが、大規模パイプラインに適用するためには、規模(スケール効果)の影響を実証試験によって検証する必要がある。

具体的データ

写真1 曲部のパイプの被害状況

図1 構造物からの離隔本数と継手間隔の変化

図2 曲管部の減災対策モデル

図3 パイプの移動量と対策効果

その他

  • 研究中課題名:地域防災力強化のための農業用施設等の災害予防と減災技術の開発
  • 実施課題名:パイプラインの耐震性評価手法の開発と対策工の検証
  • 実施課題ID:412-c-00-007-00-I-09-6707
  • 予算区分:交付金研究
  • 研究期間:2007~2009年度
  • 研究担当者:毛利栄征、松島健一、有吉充