農村・農作業体験時の脳内活性からみた教育・保健休養機能の定量化手法

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要約

農村・農作業体験学習を行った場合に、体験中と体験前における脳内酸素量の変化を解析することによって、脳内の活性状態と安静状態の指標から、教育・保健休養機能を定量的に把握することができる。

  • キーワード:農作業体験、教育機能、保健休養機能、無侵襲酸素モニタ
  • 担当:農工研・農村環境部・景域整備研究室
  • 代表連絡先:電話029-838-7614
  • 区分:農村工学
  • 分類:研究・普及

背景・ねらい

農業・農村体験がもつ教育・保健休養機能を定量的に解明することは、都市農村交流やグリーンツーリズムの推進のための理論的背景を支えるとともに、効果の高い環境・食農教育プログラムの設計につながる。そこで、本研究では、1泊2日のグリーンツーリズムに都内在住の大学生に参加してもらい、草刈り作業、そば打ち体験、森林浴等の様々な農村での生活体験を実施し、体験中の脳の活性状態を示す脳内酸素量の変化を指標として、体験活動が有する脳内の活性と安静の指標から教育・保健休養機能の定量的把握を行う。

成果の内容・特徴

  • 東京都内出身で都内在住の大学生9名の被験者に対し、1泊2日の新潟県旧松之山町でのグリーンツーリズム体験として、棚田散策、ぶな林散策、そば打ち、縄ない、草刈り等の9種の行為、東京都内での日常生活として、テレビ視聴、音楽鑑賞、会話、勉強、テレビゲームなど14種の行為を行ってもらい、それぞれの行為中の脳内酸素量と行為前の無タスク(閉眼無行為)での脳内酸素量を計測する。(図1)
  • 一行為中の酸素化率(血液中の酸素化Hb定量指数の総Hb定量指数に対する割合)の平均を行為直前の無タスク中の酸素化率の平均で割った値を「酸素化率比」、一行為中の酸素変化量(酸素化Hbの相対指数)の平均から行為直前の無タスク中の酸素変化量の平均を差し引いた値を「酸素変化量差」とした2つの指標により脳内活性を評価する方法を考案し、脳内活性を図2のように4パターンに分類した。uuは酸素量が多く増加傾向にあり、「活性傾向」、ddは酸素量が少なく減少傾向にあり、「安静傾向」と表現する。(Hb:ヘモグロビン)
  • グリーンツーリズムでの体験行為別の評価指標値をプロットしたのが図3である。「そば打ち」や「草刈り」においては、uuパターンとなる被験者が多く、脳内は活性傾向を呈している。それに対して、「ぶな林散策」はduパターン、「棚田散策」はudパターンを呈し、脳内が安静または安静に向かおうとしていることが伺える。
  • 図4は、グリーンツーリズム体験行為と日常行為の酸素化率比、酸素変化量差をプロットしたものである。グリーンツーリズム体験行為が波線の楕円で表したように、幅広い脳内酸素状態を作っているのに対して、日常行為では、ほとんど酸素化率比1、酸素変化量差0の中央に集まる。日常生活行為はやり慣れた作業内容であるため、活性もしなければ、安静もしないが、グリーンツーリズム体験は活性も安静も効果が大きく表れる。

成果の活用面・留意点

  • 酸素化率比と酸素変化量差の2指標から脳内活性状態を評価する方法は、行為の些細な動きとの関係を分析できないが、行為全体の平均的な評価が可能である。
  • 本成果における脳内酸素量の計測は、島津製作所の無侵襲酸素モニタOM-220を利用し、右脳前頭前野のみの一行為3分間の計測を行っている。

具体的データ

図1 計測の行為例

図2 酸素化率と酸素変化量差による脳内活性指標

図3 グリーンツーリズム体験時の脳内酸素発現パターン

図4 グリーンツーリズム体験行為と日常行為の脳内酸素発現パターン(GT:グリーンツーリズム)

その他

  • 研究中課題名:地域資源を活用した豊かな農村環境の形成・管理技術の開発
  • 実施課題名:仮想現実空間を利用した農村景観の感情誘因評価手法の開発
  • 実施課題ID:421-d-00-001-00-I-09-9103
  • 予算区分:交付金研究
  • 研究期間:2008~2010年度
  • 研究担当者:山本徳司