農村生活圏におけるGISを活用した広域的な地域診断法

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要約

GISと国勢調査データ等の汎用的データ及び既存ソフトウェアを組み合わせることにより、農村生活圏の人口、産業、交通、生活に関する定量的な地域診断が可能な手法であり、地方・国・住民の間で地域の再生・活性化のための情報共有・連携に活用できる。

  • キーワード:GIS、生活圏、地域診断、地域再生・活性化
  • 担当:農工研・農村総合研究部
  • 代表連絡先:電話029-838-7536
  • 区分:農村工学
  • 分類:技術及び行政・参考

背景・ねらい

少子高齢化、人口減少社会が到来する中で、農村地域の定住条件の確保と地域経済の活性化を通じた地域の再生・活性化が農村の振興にとって重要な課題となっており、集落の分散性、人口の希薄性といった農村の立地条件に応じ、コミュニティ・生活・産業・資源管理に関する新たなシステムの形成が求められている。 そこで、北日本~西日本の県単位において小規模で散在する集落の特徴(人口、産業、交通、生活)を広域的に把握し、各種指標や地域診断に役立てるツールを整備することにより、地域の将来像・目標について地方公共団体・国・住民の間での情報共有と連携強化に資する。

成果の内容・特徴

  • 全国でも人口減少・高齢化が進行している山形県、高知県、鹿児島県及び富山県の4県を対象として、国勢調査の1kmメッシュ人口データとメッシュの隣接関係から、GISを活用して「小規模・散在集落」を抽出・分類(小規模・散在性はランク2、ランク1、ランク0の順に強い)する(図1)。次に集落ランクごとの人口、産業、交通、生活に関する数値指標について、国勢調査や事業所統計等によるメッシュ単位のデータと距離計算ソフト等を組み合わせて算出する。
  • この手法によれば、小規模・散在集落(ランク2、ランク1)は、そうでない集落(ランク0)に比べ、人口減少率や高齢者人口率が大きく、図2図3にみられるよう30分時間圏の事業所就業者数や60分時間圏の救急病院病床数が少なく、中心市までの時間距離が大きいなど、生活環境に影響を及ぼす指標を定量化できる。また、集落から30分圏内の事業所就業者数は中心市までの時間距離(車で一般道を利用するとして目的地までの到達時間を算定)が大きいほど少なくなり、就業機会が著しく減少する、高知県では事業所就業者数が多い集落と著しく少ない集落に分かれるなど、就業の場の確保等農村生活圏における施策立案に活用できる情報が明らかになる。
  • 以上に加え、市町村単位でみると、例えば小規模・散在集落の人口が多い市町村ほど、高齢者人口率や人口減少率が大きく、財政力が脆弱であるなどの特徴が分かり(表1)、行政コストの効率化と財政健全化のための取組の重要性などを明らかにできる。

成果の活用面・留意点

  • 農村地域の状況を生活圏を含め広域的に俯瞰することにより、地域の指標を客観的に把握することができ、公共サービス施設(医療等)の立地や雇用機会の確保など、農村の振興に係る関係機関の連携・協働のための情報共有やモニタリングに活用できる。
  • 「小規模・散在集落」という項目以外に「人口減少率の大きな集落」など、目的に応じ農村生活圏に関する様々な分析ができる。
  • 具体的データは山形県を中心に示したが、他の3県についてもほぼ同じ動向を示す。

具体的データ

図1 小規模・散在集落の抽出と分類

表1 小規模・散在集落の人口割合(市町村単位)と産業等の指標の相関係数

図2 山形県の集落ランク別の時間圏指標

図3 中心市までの時間距離と 30 分時間圏事業所従業者数

その他

  • 研究中課題名:農村地域の活力向上のための地域マネジメント手法の開発
  • 実施課題名:限界集落化抑制対策シナリオの作成
  • 実施課題ID:413-a-00-003-00-I-09-7319
  • 予算区分:交付金プロ(地域管理)
  • 研究期間:2007~2009年度
  • 研究担当者:高橋順二、齋藤信也・石川敬義(荘銀総合研究所)